電波プロダクトニュース
041104_02
3軸ホールセンサー ――逆の発想から生まれた。センサーメーカーが開発したら違うものができていた…。 歩くと同時に地図が動く、GPSを搭載したauのEZナビウォークサービス。この携帯電話上のサービスで使用されている電子コンパスを実現するのが、旭化成エレクトロニクスが開発した、3軸方位角センサー「AK8970」である。同サービス対応の携帯電話「A5502K」「A5505S」「W21S」「W21SA」に全面採用された。 旭化成エレクトロニクスの研究開発センター電子部品研究所・山下昌哉所長は「まず、何を作るかの手段ではなく、何ができるかという目的から入った。ユーザーが使う場面を想定し、他社は2軸センサーを製品化するなか、携帯電話を水平にしないと測れないのは不自然と考え、最初から3軸センサーで開発を進めた」と語る。 さらに磁気センサーとしては感度が低く、地磁気は測れないという認識がある「ホールセンサー」を用いた。 同社の子会社旭化成電子はホールセンサーでは世界シェア70%、年間生産量20億個を有する実績がある。「まずは社内を説得することから始めた。実際に動いているものを見せて回った」(山下所長)。 携帯電話内部にはスピーカーやバイブレーターなどの地磁気により大きな磁場を出す部品が多数あり、この磁場の影響を補正する方法を実現しなければ、どんな高感度センサーも使い物にならないと認識。 このため、まず初めに基準点からのずれを測る、オフセットの自動調整アルゴリズム「DOE(ダイナミックオフセットエスティメーション)」を開発した。これにより温度変化やメモリーカードの出し入れなどのオフセット磁界変化に対してダイナミックに対応できた。この磁場のなかではワイドレンジの測定に最適なのはホールセンサーだった。 アルゴリズムとともに、子会社旭化成マイクロシステムの信号処理技術により3つのホールセンサーを時分割して信号処理し、デジタル信号を出力するアーキテクチャーを開発、センサー駆動用ICを一チップ化した。 このセンサー駆動用ICと3軸ホールセンサーをモジュール化し、03年に3軸方位角センサー「AK8970」(5.9×6.3×1ミリメートル)を製品化した。 2001年のチーム結成から、2年で量産。「社内にあるノウハウ、設備をすべてそのまま使用できた」(山下所長)。 今年は「AK8970」を3分の2に縮小した「AK8970N」(5×5×1ミリメートル)を開発、3月からサンプル出荷を始めた。 万歩計や3D表示も 今後、この3軸方位角センサーをもとにMEMS(マイクロマシン)メーカーと協力して加速度センサーとのモジュール化を行う計画である。万歩計や3D表示などの新たなアプリケーションの提案も行っている。「2年に1回、改良を続け小型化を図る。なにができるかということをまず考え、センサーソリューションを提供していく」(山下所長)。 旭化成エレクトロニクスは2003年に旭化成グループの分社化により設立(04年3月期売上高825億円)。電子部品事業では、子会社である旭化成電子(売上高150億円)、旭化成マイクロシステム(同419億円)と協力した開発体制で新たな事業分野での売上げ拡大を目指す。 携帯電話向けには今回の3軸方位角センサーに加え、小型開閉センサー、ポインティングデバイス、自動車用では電流センサーや回転角センサーなどの提供を始める。同研究所のセンサーソリューションのブランドを《エスキューブ》と名づけている。 「研究所が、旭化成電子、旭化成マイクロシステムをつなげる役割を果たし、新しいセンサーソリューションの提供を目指す。研究所から生み出されるビジネスを現在の10億から2010年には50億―100億円に拡大していく計画である」(山下所長)という。 |
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