高飽和磁束密度アモルファス金属材料2605HB1
システムの新アモルファス鉄心
新アモルファスHB1の磁気特性
アモルファスと電磁鋼板の鉄損特性
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日立金属はこのほど、変圧器の鉄心用に最適な新アモルファス金属材料「高飽和磁束密度アモルファス金属材料2605HB1」を開発。日立産機システムは、この材料を使用して小型・低騒音化を図った低損失の次世代アモルファス変圧器を開発した(既報)。両社は、新アモルファス金属材料、および次世代アモルファス変圧器により、受電・配電時の電力損失低減を図り、地球温暖化防止への貢献と、世界的な電力需要の急増に対応していく。
地球温暖化防止のため、二酸化炭素などの温室効果ガス排出量削減ニーズが高まり、エネルギの効率的な使用、使用電力量低減などが求められている。同時に、発電所から変電所を経由して工場、ビルでの受電および一般家庭などへの配電を行う時に、変圧器で発生する電力損失を低減することも課題に挙げられる。
変圧器の鉄心は、軟磁性材料の1つである電磁鋼板が主流。電磁鋼板を、日立金属のアモルファス金属材料に置き換えることで、変圧器の鉄心での電力損失低減が可能。日立産機は、トップランナー方式の現行基準値に適合した変圧器である、アモルファス金属材料を鉄心に用いた変圧器を97年から販売している。アモルファス変圧器は、省エネ性能に優れているが、さらに、変圧器の小型化・低騒音化を図った次世代アモルファス変圧器の開発が求められていた。
今回の開発は、こうしたニーズに対応したもの。新開発の「2605HB1」は、従来材の鉄系アモルファス金属材料「2605SA1」に比べ、飽和磁束密度B(T)が1.64(従来材料1.56)と5%向上し、変圧器の小型・軽量化に貢献。鉄損P(W/kg)は0.63(従来材料0.07)と従来比で10%低減し、変圧器での電力損失を低減、温室ガス排出量削減に寄与する。
この新アモルファス材料を使用して、日立産機が開発した配電用次世代アモルファス変圧器は、従来のアモルファス変圧器より鉄心の小型化が図れるため、現行の電磁鋼板変圧器と据付面積を同レベルまで低減でき、同時に騒音を10デシベル程度低減する。
特許出願数は、日立金属2件、日立産機1件。新アモルファス金属材料の用途としては、産業用変圧器や電力用変圧器の鉄心、変圧器以外の各種鉄心など。
08年度25億円を計画
日立金属は、今回の新アモルファス金属材料のサンプル出荷を06年度から開始、07年度に年間15億円、08年度には年間25億円の販売を計画。日立産機は、次世代アモルファス変圧器を06年度からサンプル出荷、07年度に年間25億円、08年度には年間35億円の販売を計画する。
アモルファス金属は、通常の金属材料(結晶材料)と異なり、規則性のないランダムな原子配列を特徴とする。結晶磁気異方性がないため、スムーズに磁化でき、優れた軟磁性を発揮する。熱処理で磁気特性の方向性を制御できる。
アモルファス金属材料は、03年8月まで、米ハネウエル社が事業を展開してきたが、現行材料のSA1が95年頃の発売後は、変圧器用鉄心材料の新規開発は途絶えていた。日立金属は、この事業を03年に買収し、METGLAS(メタグラス)社を設立、事業構造の再構築と、関連技術開発の再構築を進めてきた。 |