この春から始まった第5世代高速通信規格5Gの商用サービスは、既存の4Gコアネットワークと5G基地局との連携による「ノンスタンドアロン(NSA)」のシステム構成を採用しており、提供できるサービスも限定的。高速大容量、超低遅延、多数同時接続というフル機能を発揮できる「真の5G」の提供には5G単独で動作する「スタンドアロン(SA)」の導入が必須となる。通信各社は21年ごろの導入に向け、取り組みを加速させている。
携帯電話事業者は、こうした高度な技術を可能にする5Gの提供に向け、通信機器ベンダー各社とSAネットワーク構築に向けた実証実験を重ねている。
最近の例では、KDDIが2月にシスコシステムズ、エリクソン・ジャパン、ノキアソリューションズ&ネットワークスとそれぞれ協力し、各社が開発したクラウドネーティブ・アプリケーションやオーケストレーションなどのソフトを用いて5GCの評価を実施。ネットワークスライシングの動作検証に成功した。またNEC、富士通、ノキアと5G基地局仮想化やマルチベンダー接続の実証実験も進めている。
SAの導入時期については、移動通信システムの標準技術仕様を策定する3GPPの「リリース16」を待たなくてはならない。SA、低遅延・超高信頼性の標準などを正式に決めるリリース16は3月にも完了の予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で標準化作業が3カ月延期された。
ソフトバンクは先月開催した法人事業説明会で、21年度中にSA型の5Gネットワークを導入する方針を示した。高度化したネットワークで多様なサービスを順次提供していくとし、22年には法人向け新サービス「プライベート5G」を開始。キャリアが提供する「パブリック5G」と、地域や産業の個別ニーズに応じて企業や自治体などが自らの敷地内でスポット的に構築できる「ローカル5G」の中間に位置する新サービスで、「スライシングによる個別機能も提供したい」(同社)と意気込む。
また、4月に携帯電話事業へ新規参入し、9月に5Gサービス開始を目指す楽天モバイルも、21年からのSA型の5Gネットワーク提供に意欲を見せる。5GCはコンテナ技術を導入したもので、NECと共同で開発する。楽天では国内での展開のみならず、海外の通信事業者向けにも5GCを提供していく考えだ。