岡山大学大学院自然科学研究科(工)の菅誠治教授、光藤耕一准教授らの研究グループは、溶液に電気を流して反応をおこなう有機電解という手法を用いることにより、有機太陽電池や有機トランジスタに用いられる有機半導体分子を効率的に作る方法を開発した。
現在、ウエアラブルデバイスなどの実現に欠かせない、軽くて柔らかい太陽電池の開発が盛んに行われている。そのような電池には軽くて性能の良い有機半導体分子が欠かせないため、その開発が活発だ。しかし、有機半導体分子を合成するには、これまで高価なレアメタル触媒を用いるのが一般的だった。そのため、製造コストが高くなるだけでなく、合成した有機半導体分子へのレアメタル触媒の混入が問題となっていた。
レアメタル触媒を使わずに、溶液に電気を流すことで有機半導体分子を合成する手法を開発した。電気を流して反応を行う「有機電解」と呼ばれる手法は、岡山大学が長きに渡り得意としている分野で、廃棄物を排出しないクリーンテクノロジーとして、現在も世界的に注目を集めている。今回、岡山大学大学院自然科学研究科(工)の菅教授、光藤准教授らのグループは、その有機電解反応の条件を最適化し、レアメタル触媒を使わなくても同様の反応が進行する反応系を開発した。安価な臭素化物塩を反応系中にわずかに入れることで、これまでは実現できなかった炭素とイオウとの間の結合ができ、高効率で有機半導体分子が得られる。
日本が提唱する未来社会の姿「Society 5.0」の実現には、軽くて優れた性能をもち、かつ安価な有機半導体が欠かせない。また、今回開発した技術を用いれば、高価で枯渇の危機にあるレアメタル触媒を用いずに有機半導体分子を作ることが可能となる。この研究の鍵は「有機電解」という電気の力を使った手法にあるが、再生可能エネルギーで作った電気を使えば、環境負荷の少ないサステイナブルな有機合成を実現でき、同大学が推進するSDGsの観点からも極めて意義深い研究といえる。
<資料提供:岡山大学>