情報通信研究機構(NICT)は11日、標準外径(0.12mm)結合型3コア光ファイバを用いて、毎秒172テラビットで2040キロメートルの大容量・長距離伝送実験に成功したと発表した。これは伝送能力の一般的な指標である伝送容量と距離の積に換算すると、毎秒351ペタビット×kmとなり、これまでの世界記録の約2倍の記録。
次世代高速通信規格5Gの導入により、通信トラフィックは今後飛躍的に増大する見込みだ。これに対応するため、究極の大容量を追求する研究では、光ファイバのコアを増やし、各コアに異なるモードの光信号を伝送するマルチコア・マルチモード光ファイバの研究を推進。一方、早期実用化を目指した研究では、標準外径のマルチコアまたはマルチモード光ファイバの研究が行われている。
NICTネットワークシステム研究所では今回、米国ノキアベル研究所が実施した、統合型マルチコア光ファイバにおける抑圧されたモード分散特性を利用した長距離伝送実験結果を基に、NICTが大容量・長距離伝送システムを構築。359波長を16QAM変調し、世界最高記録となる大容量・長距離の伝送に成功した。
統合型マルチコア光ファイバは、マルチモード光ファイバと同様に受信側では信号処理による干渉の除去が必要だが、各コアの伝送損失のばらつきが小さく、長距離伝送に適している。この特性により信号処理の付加を小さくできるため、マルチモード光ファイバと比べ伝送システム全体の省電力化が図れる。ただ、これまでは波長範囲5nm以下という限られた信号帯域でしか伝送が行われておらず、長距離伝送特性と大容量伝送を両立できるかは解明されていなかった。今回の研究成果により、NICTでは既存設備でケーブル化が可能な標準外径で、大容量基幹系通信システムの実用化が期待できるとしている。