eスポーツ市場、23年には世界で16億ドル規模となり、放送業界の成長を後押し

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 いまeスポーツが熱い。世界で大きな注目を集め続けるeスポーツ市場は昨年10億ドルを超え、急速な成長が続く。将来のオリンピック正式種目への採用が検討され始めたことで、さらに関心が高まっている。今後、eスポーツ業界が放送業界の成長を後押しする存在になりそうだ。

 eスポーツは「エレクトロニック・スポーツ」の略で、ビデオゲームやPCゲームなどで対戦するスポーツ競技。通常のスポーツ競技と同様にリーグまたはトーナメント形式のチーム戦で行われる。無料のモバイルアプリが提供されているツイッチ、ユーチューブゲーミングといったオンライン動画配信サイトなどで視聴できる。

 eスポーツでは国籍や性別、身体能力にかかわらず、ゲームの実力さえあればスター選手になれる。特に体にハンディキャップのある人でも楽しめる。今までただの遊びだったゲームがスポーツになることは、ゲーム好きの人にとって、「好き」から「スター選手」になれるチャンスでもある。

 北米・西欧地域、韓国、中国を中心に急成長を遂げているeスポーツ市場は、ゲーム業界の動向を調査するオランダの世界大手の調査会社Newzooによると、20年の世界でのeスポーツ収益は、19年の9億5060万ドルから前年比15.7%増の11億ドルを超えると見込まれる。メディアの権利とスポンサー料、広告費などが市場全体の約8割を占める。

 また、18−23年のCAGR(年平均成長率)は14.9%増で、23年には16億ドルの市場規模になると予測している。

 eスポーツの視聴者は19年に世界で4億4300万人。20年には前年比11.7%増の4億9500万人になると予想され、今後のeスポーツファンの増加が見込まれる。

 ここ1年、モバイルeスポーツ市場も急成長を遂げ、東南アジア、インド、ブラジルなどの新興市場が成長。今後さらなる成長が期待されている。

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昨年NABで新設されたeスポーツ体験コーナー

放送機器展でアピール

 昨年、放送業界において、米国の放送機器展「NAB」やオランダの放送機器展「IBC」では急成長を見せるeスポーツ市場に注目し、eスポーツのショーケースを新設。開発中の技術やライブデモも行うなど、様々な取り組みを見せた。放送業界でもeスポーツを成長分野の一つと捉え、力を入れていく考えだ。

 正式なeスポーツ団体として、00年に韓国でeスポーツ協会が発足。ドイツでもエレクトロニック・スポーツ・リーグ社が設立されるなど、世界的にeスポーツ関連の企業や団体が設立されている。

 国内でも10年ごろにプロゲーマーという職業が認知され始め、18年2月には日本eスポーツ連合(JeSU)が発足した。企業や商品をアピールする絶好の機会でもあり、今後の成長への期待は大きい。

 今や国内でもeスポーツ関連報道が増加し、各民放局などがeスポーツ関連番組の放送を開始した。

 フジテレビは16年にCS放送のフジテレビONEでeスポーツ専門番組「いいすぽ!」を展開。テレビ東京は17年からeスポーツに取り組み、同年4月には深夜番組「勇者ああああ〜ゲーム知識ゼロでもなんとなく見られるゲーム番組〜」を放送。

 日本テレビは18年から取り組み、プロゲーミングチーム「AXIZ」をつくり、「eGG」のeスポーツ応援番組を開始。そのほか、AbemaTVをはじめ、ゲームを題材とした番組がインターネット上で多く配信されている。

 日本テレビでは18年6月にeスポーツ専門会社「アックスエンターテインメント」を設立。同年7月にはTBSテレビが専門部署「TBS eスポーツ研究所」を開設した。

6社共同出資で新会社

 さらに、今年1月にNTT東日本、NTTアド、NTT西日本、NTTアーバンソリューションズ、スカパーJSAT、タイトーがeスポーツ分野における新会社「NTTe―Sports」を共同出資で設立。次世代eスポーツのトータルソリューションの提供やコミュニティの推進、地域社会と経済活性への貢献を実現していく。

 先月、国内初となる「東京eスポーツフェスタ」が開催され、盛り上がりを見せた。国内でもeスポーツ人気と普及に今後ますます期待が集まりそうだ。