NEDO、アイシン精機、東京大学などが車向けに吸収冷凍機を開発

車両の排ガス熱を回収し冷熱を発生 塗布構造吸収器を採用

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開発したエンジン車両搭載型小型吸収冷凍機

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、未利用熱エネルギー革新的活用技術研究組合(TherMAT)、アイシン精機、産業技術総合研究所(産総研)、東京大学は、世界で初めて「塗布構造吸収器」および、吸収器全体を水蒸気透過膜で覆う「メンブレンラッピングアブソーバー」を採用したエンジン車両搭載型小型吸収冷凍機を開発した。NEDOが取り組んでいる「未利用熱エネルギーの革新的活用技術研究開発」の一環。

 従来の自動車の冷房は圧縮式冷凍機を用いているため、冷房時には走行以外にエンジンでコンプレッサを作動させる燃料が必要で、その燃費は非冷房時に比べて5-50%程度悪化するとされている。一方、エンジン車では燃料の持つ熱エネルギーの約60%が未利用の熱エネルギーとして捨てられている(TherMAT調べ)。この未利用熱をエネルギー源として冷房運転を行う吸収冷凍機を用いることができれば、年間約12%の燃費向上が期待できる。

 一般的な吸収冷凍機は、主に燃料を燃焼させた熱をエネルギー源とし、水を蒸発させたときの気化熱を冷房に利用する方式で、大型のシステムを中心に設置されており、オフィスビルなどで使われる。吸収冷凍機をエンジン車に用いる場合、必要とされる冷房能力は、オフィスビルなどに用いられる据え置き型に比べて1桁以上小さい数kW程度。しかし、エンジン車の排熱利用と車載可能な条件を考えると、容積および重量当たりの冷房能力をそれぞれ20-40%、130%程度高めなければならず、大幅な小型化と軽量化が必須となる。

 さらに、車両走行時特有の傾斜、振動、高温など、据え置き型では考慮する必要のない制約条件への対応も必要だ。これらの課題が予想されることから、これまで車載吸収冷凍機の実用化は困難だった。

 NEDOは15年から未利用熱エネルギーの革新的活用技術研究開発の中で、「車両用小型吸収冷凍機の研究開発」に取り組んでいる。今回同事業でTherMATとアイシン精機、産総研、東京大学は、塗布構造吸収器と、吸収器全体を水蒸気透過膜で覆う「メンブレンラッピングアブソーバー」を世界で初めて採用した、エンジン車両向け小型吸収冷凍機を開発した。

 同冷凍機は、車両の排ガス熱を回収して冷熱を発生する吸収冷凍機を車両に搭載するために小型・軽量化したほか、塗布構造吸収器とメンブレンラッピングアブソーバーの採用により、車両の傾斜や振動、高温などの車両環境に対応可能だ。