5Gスマホ続々登場ミッドレンジ製品が普及を後押し

 20年は次世代高速通信規格5Gの商用化が世界中で本格化する。これに伴い5G対応スマートフォンが続々登場する見通しで、長らく低迷が続いたスマホ市場回復のカンフル剤となりそうだ。特に期待されるのがミッドレンジ分野の拡充。高スペックながら手頃な価格の端末が5Gの普及を後押しする見込みだ。

 7日から4日間、米ラスベガスで開催された「CES2020」では、AI(人工知能)やVR(仮想現実)/AR(拡張現実)とともに5Gがキーワードの一つとなり関連技術や製品が多数紹介された。

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5Gスマホを展示したCESのサムスンのブース

 2月に世界最大のモバイル関連展示会「モバイル・ワールド・コングレス(MWC)」の開催を控えていることもあって新機種の発表こそ少なかったものの、韓国のサムスン電子やLGエレクトロニクスなどが昨年来、投入してきた5G端末を展示。サムスンの折り畳み式「Galaxy Fold」や、中国ファーウェイ(華為技術)の19年秋冬フラグシップモデル「Mate30Pro」のタッチアンドトライには順番待ちの長い列ができ、関心の高さを見せた。

 また今回、シャープは8Kカメラ搭載の5Gスマホを開発中であることを発表。CES初出展の京セラは、警察や工事現場などでの使用を想定した法人向け5Gスマホを年内に北米市場向けに展開する計画を明らかにするなど、日本企業も新市場に懸ける意気込みを強くアピールした。

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CESで5Gスマホを発表する
TCLグローバルマーケティング担当
ステファン・ストレイトGM

 さらに10万円を超えるハイエンド端末が主流だった5Gスマホ市場の新潮流として、中国のTCLがミッドレンジ市場向けの新機種「TCL10 5G」を発表し注目を集めた。詳細なスペックは明らかにしていないが、クアッドカメラ搭載の同端末には、クアルコムが昨年12月に発表したばかりの5Gモデム内蔵SoC「スナップドラゴン765G」を採用。第2四半期(4-6月)に米国とカナダで発売される予定で、価格は500ドル(約5万4000円)を下回る見通しだ。

 5Gスマホ市場は立ち上がったばかりだが、スウェーデンの通信機器大手エリクソンによれば、19年の5Gデバイス出荷台数は約1300万台。また携帯電話事業者の国際業界団体GSAのまとめでは、昨年12月半ば時点で5Gスマホは63機種が発表され、商用可能な製品は29機種に上る。初期展開の段階で投入された機器としては、LTEをはるかに上回ると業界関係者は口をそろえる。

 クアルコムでは、最新のハイエンド用SoC「スナップドラゴン865」とともに「同765/765G」を提供することで「幅広いユーザーに5Gのメリットを提供する」という。765に関しては中国のOPPOも最新機種「Reno 3 Pro」に使用。クリスティアーノ・アモン社長はCES記者向け説明会で765の採用数が865の2.5倍に達していることを明らかにした。

 今回のCESではスナップドラゴン765と同様、ミッドレンジの5Gスマホをターゲットに台湾のメディアテック(聯発科技)も新SoC「Dimensity800」を紹介した。同社は昨年11月、ハイエンド向けで初の5G用SoCを発表しているが、5Gスマホ普及の鍵はミッドレンジにあるとして新チップを積極展開。もともと中-低価格帯向けSoCで成長を遂げてきた企業であり、ミッドレンジ市場での豊富な知見を武器にクアルコムに対抗する。同SoC搭載端末は今年上半期に登場の予定だ。

19年の出荷数1.9億台

 米IDCでは、19年の5Gスマホ出荷台数は1億9000万台、市場全体の14%を構成すると予想している。これにけん引され、低迷が続く世界のスマホ市場も4年ぶりにプラスに回復すると見られている。エリクソンによれば、25年には5G加入契約数が世界で26億件に達する見通しで、これに連動してスマホ需要も大幅な増加が見込まれる。