エレクトロニクス商社の菱洋エレクトロは、高成長が見込まれる医療・ヘルスケア分野の開拓に力を入れている。18年度に総売上高の約6%を占めた同分野の関連ビジネスを、21年度に約10%へと引き上げる目標を掲げた。
その一環で、AI(人工知能)を活用して胃がんの内視鏡検査の正確性を高める診断支援システムの成長性に注目。システムに必要な商材の提案に乗りだした。
同社は10月、内視鏡の画像診断を支援するAIを開発しているAIメディカルサービス(AIMS、東京都豊島区)が実施した第三者割当増資の一部を引き受けたと発表した。AIMSが企業理念として掲げる「世界の患者を救う 内視鏡AIでがん見逃しゼロへ」の実現を後押しすることになった。出資額は約2億円。
AIMSが実用化を目指して開発を進めるのは、内視鏡で撮影した画像データを基にAIのアルゴリズムを作成し、それを用いて医師の診断を支援するシステム。発見した病変が良性か悪性かを自動的に判別し、その範囲を特定する。
菱洋エレクトロは今回、日本HPと米GPU(画像処理半導体)大手、NVIDIA(エヌビディア)の1次代理店という強みを生かし、GPUを組み込んだワークステーションなどの提案を医療機器メーカーや病院向けに開始。画像データの高速処理で必要となるGPUはエヌビディア製を採用した。
既に約30年前から、ワークステーションやサーバーを医療機器メーカーに提案するなど、実績を積み上げてきた。今年2月には、ICTとIoTの両事業を融合する目的で「ソリューション事業本部」を設置。成長市場の一つとして医療・ヘルスケア分野に焦点を当てた社内横断のタスクフォースも立ち上げた。
ソリューション事業本部の青木良行副事業本部長は「AIメディカルサービスと連携して展開先を広げたい。その一つとして歯科向けX線・CT(コンピュータ断層撮影装置)画像をAIで分析する取り組みにも注力したい」と話している。
胃の内視鏡検査は、先端にカメラが付いた細いチューブを口などから挿入して人体内部を観察するもの。日本で年間10万人以上が発症する胃がんの診断にも有効とされるが、近年の内視鏡検査数の増加に伴って医師の負担が増大しており、早期のがんなど判定が難しい病変の見落しが懸念されている。