パナソニックは、ディープラーニング(深層学習)を応用した独自開発の顔認証技術のAPI(アプリケーションインターフェイス)を公開し、25日から提供を始めた。約30年にわたり開発してきた顔認証技術をクラウドサービスで利用できるようにするもので、初期費用も必要なく、様々なシステム環境に同社の顔認証を組み込めるようになる。
92年から開発を始めた顔認証技術には、複数の深層学習を融合して顔全体と顔詳細を把握する手法および撮影環境に応じて誤りを制御する手法を組み合わせた独自のアルゴリズムを採用。非常に軽量で、従来比10倍高速に判別できる構造を採用し、深層学習を使いながらも高速高精度な認証ができる特徴がある。
登録写真の品質を判別する技術も持つ。これら技術により従来認証が難しかった斜めの顔や照明の明暗が強い環境、サングラスやマスクなどで顔の一部が隠れている状態でも高速高精度な顔認証ができる。
同日、東京都内で会見したコネクティッドソリューションズ社江坂忠晴副社長兼イノベーションセンター所長は「単純に認証率、認識率だけでなく、UI(ユーザーインターフェイス)などのデザイン力と使い勝手を重視。監視カメラやデジタルカメラ、家電の技術をトータルで提供できることが強みになっている」と述べた。
提供を始めたAPIはクラウドサービスとして用意。既に海外クラウドベンダーなどが顔認証のサービスを展開するが、「カメラメーカーとして培ってきた逆光補正やノイズ除去など高い技術を使い、実務に適用しやすい顔認証技術として利用できることが大きな違いだ」(相澤克弘イノベーションセンターIoTサービス事業統括部長)という。
クラウドを経由するため、多拠点間での利用ができるほか専用端末を必要としない。同社IoTサービス「ミューソケッツ」上で提供し、高いセキュリティも確保されている。
パナソニックグループ販売会社をはじめ、パートナー企業経由でも販売する。スタートアップ企業などに向けてはEC(電子商取引)サイトでも取り扱う。「技術習得や開発支援、情報共有などができる顔認証APIコミュニティも開設する」(相澤統括部長)計画だ。
価格はスタンダードエディションで登録人数1人当たり5円、認証回数1回1円で提供する。従業員200人、1人1日4回認証、20営業日で月1万7000円となる。19年度中にビジネス向けのプロフェッショナル版を、20年度中に個人情報保護機能などを持つエンタープライズ版を発売する。
製造物流の現場をはじめ、金融業界、エンターテインメント、MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)、オフィス、オンラインビジネスなど、本人認証が必要となる領域に提案していく。3年後に300社の導入を目指す。
今後は四つの軸でサービスを展開する計画。江坂副社長は「要望に合わせて構築するだけでなく、ソフトウエアとハードを組み合わせたモジュールパッケージとしての販売、ソフト開発キットを提供しパートナー連携を図るモデルなどとともに提案していく」と話している。
APIサービスの開始に合わせ、国内最大級のマッチングアプリ「タップル誕生」を運用するサイバーエージェント子会社のマッチングエージェント(東京都渋谷区)が、本人確認強化を目的に採用。今年冬から本人認証機能を提供し、安全に利用できるようにする。マッチングエージェントの合田武広社長は「安全安心が求められる中で世界最高水準のパナソニックの顔認証を採用した。今後、さらに高度な認証の導入にも取り組んでいく」と述べた。