中国の半導体産業が成長している。市場規模の拡大に伴って半導体の内製化を進め、25年には自給率を70%まで引き上げる。中国の躍進に着目し、中国製半導体の販売に乗りだす日系エレクトロニクス商社もある。
米中貿易摩擦の先行きが不透明な中で、80年の改革開放以来、製造業の持続的な成長を続けてきた中国は「中国製造2025」を掲げて次世代産業に向けた革新を起こしつつあり、半導体産業はその中核を担う。
世界の半導体市場規模は18年時点で4800億ドル(約52兆円)、そのうち約50%を中国が消費している。
中国製造2025では、25年に自給率を70%まで引き上げる計画。
中国の半導体・半導体製造装置メーカーが技術的なキャッチアップや性能評価、半導体素材のインフラなどに時間を要することから自給率の向上は計画通りに進まないとの予測(米調査会社ICインサイツなど)もあるが、中長期的に中国が半導体の一大生産国になるのは必至だ。
SEMIによると、19年の半導体製造装置市場は18年に比べて約18%減少するが、20年には再びプラス成長に転じる見通し。地域別では19年は台湾が増加し、韓国は需要が落ち込む。20年には中国でメモリー投資を中心に145億ドル規模が予測され、世界最大の半導体製造装置の需要国になる見込み。
既に稼働しているTsinghua Unigroup(清華紫光)/Unis南京プロジェクトは30万枚、YMTC(長江存儲)も30万枚などの能力を持つ。
また、紫光集団傘下の長江ストレージ(旧XMC)は16年春に240億ドルを投じ、20年までに月産10万枚の3次元NANDフラッシュメモリーのファブを3棟建設。30年には月産100万枚規模に拡張する。DRAMでは、紫光集団が四川省成都に、JHICCが福建省泉州に、イノトロン(旧RuiLi、Hefei Chang Xin)が安徽省合肥市に、それぞれ最先端1Xnm用の巨大工場を建設する。
生産ラインを持たないファブレス企業も台頭してきた。ハイシリコン、清華紫光は世界の半導体売上げシェア上位10位に入るまでに伸長した。ハイシリコンは台湾TSMCに生産を委託している。これらファブレスの中には最先端7ナノメートル半導体ロジックICの設計ができるまでに成長し、AI(人工知能)搭載半導体の設計技術を基に他分野に展開して売上げ拡大を検討する企業もある。
中国国内の半導体需要はスマートフォンや自動車、サーバー、監視カメラネットワーク、産業用ロボットなど様々な分野で広がりを見せる。中国製造2025の担い手とされていたファーウェイ(華為技術)やZTEは、現状ではアメリカなどから締め出されているものの、ファーウェイの投資は積極的だ。
「ファーウェイは中国国内と欧州市場に向けた事業を強化し、設備投資を積極的に行っている。当社はファーウェイと取引しており、今年上期の受注は生産ラインや半導体設備関連の測定器など前年同期に比べて倍増した」(日本電計)と日系企業にも好影響をもたらしている。
中国での次世代高速通信規格5Gサービスが11月1日から始まった。基地局投資や端末の製品化が今後本格的になり、半導体需要を押し上げる。中国政府の一帯一路構想は「デジタルシルクロード構想」とも呼ばれるように、情報通信技術や半導体が鍵を握る。
日系エレクトロニクス商社も中国の半導体産業に着目し、本格的な販売に乗りだしている。丸文は、中国のゴーウィン社と販売代理店契約を締結し、同社のFPGAの販売を開始した。
ゴーウィン社はFPGA開発の技術者が集結して14年に中国で設立された。17年、製品出荷を開始。昨年までに既に400社を超える顧客に1000万個以上のFPGAを納入している。同社は業界で初めてFPGAにpSRAM(疑似SRAM)を内蔵するなどの技術を擁する。
丸文は標準ロジックICからカスタムデバイスまで幅広いラインカードを持ち、ゴーウィン社のFPGAを追加することで、今まで以上に顧客のニーズにフィットした最適なソリューションを提供する。