電子部品各社

表面実装が可能な全固体電池の量産が本格化

画像1
SMD対応の全固体電池の量産が始まる

 酸化物固体電解質を使った全固体電池の量産が本格化している。IoT機器やウエアラブル機器など、大容量よりも小型化と安全性が要求される分野で通常のSMDと同じ扱い(実装)ができる用途での採用が始まる。TDK、村田製作所、FDKといった電子部品メーカーが生産を立ち上げる。

 全固体電池は、固体電解質に硫化物系、酸化物系、樹脂系を用いた製品の開発が活発化。中でも、電子部品メーカーでは、積層セラミックコンデンサ(MLCC)をはじめセラミック部品を手がける企業が、コア技術である焼成プロセス技術をベースに小型SMDタイプの全固体電池の量産を始めることになった。

 酸化物固体電解質の全固体電池は、イオン伝導度では既存電池や硫化物系の全固体電池に比べて劣るものの、不燃性や耐水性に優れ、電池の安全性が高いという特徴がある。しかも、一般的な電子部品のSMDと同様な実装形態で扱えるため、省電力化が進むIoT機器やウエアラブル機器、さらには、半導体デバイスの制御関連などで具体的な採用が始まりつつある。

【積層技術を生かす】

 TDKは、センサーとともに使用するなど、海外市場を中心に用途が具体化してきたことを踏まえ、今夏から量産を開始する。

 オールセラミックで4.5×3.2×1.1mmサイズ。定格電圧1.4Vで容量100μAhを実現した。充放電サイクル数は、条件により1千サイクル以上が可能。長年蓄積してきた銅の電極技術と、数多くの受動部品で実績のある積層技術を生かした。

【20年度中に月産10万個】

 村田製作所の全固体電池は、サイズ5―10×5―10×2―6mm、容量2―25mAh(25度)、定格電圧3.8V。野洲事業所(滋賀県野洲市)で20年度中に月産10万個の量産に入る。

 19年度に2千億円の売上げを目指すリチウムイオン二次電池とともに、今後の同社電池事業をけん引していくと見ている。

 FDKは、18年12月に全固体電池のサンプル出荷を開始したが、さらにアプリケーションの開発を有利にするため高容量化に取り組み、2.5倍の体積エネルギー密度を達成。近くサンプル出荷を開始し、引き続き20年度の量産に向けた準備を進める。

 同社の製品は、富士通研究所と17年2月に開発した高電位正極材料「ピロリン酸コバルトリチウム(Li2CoP2O7)」を用いて、18年12月に開発。さらに従来の内部構成と形成プロセスを改良することにより、従来比2.5倍となる体積エネルギー密度(65Wh/L)の高容量化を実現した。業界最高の電池容量500μAh(同社従来比3.5倍)も達成している。公称電圧は3V。サイズは4.5×3.2×1.6mm。