米国初となるスマホ対応のモバイル5Gサービスは19年4月3日にベライゾンによって開始されたが、モバイルルーターを利用した5Gサービスは18年12月からAT&Tによって法人向けに開始されていた。また、固定無線アクセス(FWA)による5Gサービスは、既にベライゾンが18年10月から開始していた。
同社が5Gを利用したFWAを提供する背景には、CATV事業者の牙城である固定ブロードバンド市場でのシェア拡大を図る狙いがある。
その後、スマホ対応のモバイル5Gサービスは、19年5月にスプリントが、同年6月にAT&TとTモバイルが順次開始し、AT&Tを除いてコンシューマ向けの5Gサービスが提供されている(表参照)。
ウォール・ストリート・ジャーナルが各社の5Gサービスの通信速度を測定したところ、ベライゾンとAT&Tは1Gbps以上を記録し、スプリントとTモバイルでも現行LTEの約10倍に達した。
5G対応スマホは、4社そろってサムスン製のGalaxy S10 5Gを投入しているが、端末価格の割引特典については、モバイルナンバーポータビリティ(MNP)による他社からの転入や中古端末の下取り、支払い期間の縛りがある割賦契約ないしリース契約など、各社によって違いがある。ただし、モバイル5Gの通信料金は当面、既存の無制限プランに包含される形となっており、追加料金は発生しない。
無制限プランには、通信サービス(データ、通話、テキスト)のほか、コンテンツサービス(映画・ドラマ、ゲーム、音楽)などが含まれるが、一部サービスによっては通信量の合計が上限に達した場合は速度低下となる。
5G戦略を巡り米国4大キャリアに共通しているのが、FWA、モバイル、そしてモバイルエッジコンピューティング(MEC)の3事業を柱としている点である。
FWAでは固定ブロードバンド市場でのシェア拡大によって、モバイルでは既存の顧客基盤の維持・拡大によって、MECでは新たな収益源となるビジネスモデルの開発によって、収益機会を増やしていく方針である。
特にMECでは、5Gの技術的特徴である超低遅延や同時多数大容量接続を生かした、リアルタイム性が求められるエンタープライズ向けの新規サービス開発が進行中である。
新規サービス開発に当たっては、各キャリアともに5Gのラボ施設や試験フィールドを利用して、製造、小売り、金融、医療・ヘルスケア、公共安全、自動車、ゲームなどの各産業分野と協業しながら、専用のアプリやデバイスの開発・改良、現実空間と仮想空間が融合した新たな空間世界である複合現実(MR)の応用研究などが進められている。
キャリアによっては地方自治体と提携して5Gを基盤としたスマートシティの整備に取り組んでいる。早ければ、MECベースの新規5Gサービスは、19年第4四半期(10−12月)頃に登場する見通しである。(つづく)
〈筆者=マルチメディア振興センター電波利用調査部研究主幹 飯塚留美氏〉