段差や凹凸のある悪路でも走行できる移動車には、主にクローラ(キャタピラ)型が使用されているが、エネルギー効率が悪く、高速性も劣るなど、改良の余地が大きい。今回開発の技術によれば、車輪直径の8割を超えるような段差に対しても、4輪を接地させたまま、搭乗部の姿勢を水平に保ちながら移動ができる。
和歌山大学システム工学部システム工学科機械電子制御メジャーの中嶋秀朗教授は7月31日、科学技術振興機構(JST)東京本部で開催された「ロボティクス新技術説明会」(主催=JST)で、「移動プラットフォームの姿勢制御および段差移動制御技術」について発表した。
従来技術では、手動車いすの前輪を段差の手前で持ち上げるような機構や、移動する本体の姿勢を回転させるなどの技術が提案されていた。
また、自動車と同程度の大きさで構成される四輪の場合、越えられる段差は車輪直径の6割程度までに限られていた。
中嶋教授は研究テーマ「人の移動の自由を実現するパーソナルモビリティビーク」が評価され、17年6月にドイツ・イノベーション・アワードにおいて、デジタル化とモビリティ分野でゴットフリード・ワグネル賞を受賞した。
内容は、人が住んでいる屋外環境で様々なサービスをするロボット(知的な機械)が望まれているが、屋外環境には平坦な路面だけでなく、段差、傾斜路面などの不整地が多くある。そのような環境を、省エネで、高速に、かつ安定的に移動できる、応用可能性の高い実用的な「不整地移動プラットフォーム」を研究開発したことが評価の対象となった。