ダイキン・NEC
空調による温度刺激でオフィスの知的生産性は高められる
ダイキン工業とNECは25日、16年から両社で進めている知的生産性を高める空間の実現に向けた共同研究において、オフィス内での知的生産性向上には空調による温度刺激が特に効果があることを実証したと発表した。
この実証を基に、新たにまぶたの動きから眠気の兆しを検知し空調と照明で刺激を与える制御の仕組みを開発。7月から両社の検証オフィスでフィールド実験を始めた。今後検証を進め、数年後の商用化を目指す。
両社は、知的生産性を高めるためには眠気を抑え覚醒度(脳の興奮度を示す指標)を保つことが重要だと言われていることに着目し、16年10月から、覚醒度を適切に保つための室内環境づくりに向けた研究をしてきた。
実際に、温度や照度、芳香での刺激を与え覚醒度の変化を100人規模の人員で検証。このほど、空調による温度刺激が最も眠気を抑制できることを突き止め、まぶたの動きから眠気を検知し、空調と照明を制御するシステムを開発した。
NECの検証用オフィスではモニター上部のカメラで
まぶたの動きを検出し、空調(写真右上)を制御する
このシステムは、ダイキン工業が持つ温度刺激による覚醒度の制御技術と、NECが持つセンシングやAI(人工知能)技術による覚醒度を推定する技術とを組み合わせた。
覚醒度の推定には、従来のまばたきや眼を閉じている時間から算出するのではなく、まぶたの揺らぎ(まぶたの重さに耐えるゆっくりとした動き)≠ノ着目し、低いフレームレートの顔画像データから精度良く検出できるようにした。
覚醒度(グラフ最上部)をモニタしながら
空調制御(グラフ中段)などを行っていく
NECバイオメトリクス研究所の辻川剛範主任研究員は「従来の3分の1の毎秒5フレームの映像で、従来と同等の覚醒度の低下の兆候を捉えられる」と話す。これにより、処理能力の低い小型コンピュータなどでも高精度な推定ができるとみる。
このシステムは、既存の空調や照明、温度と照度センサー、Webカメラを使い開発。ダイキン工業の快適性を損なわずに覚醒度を高める空調環境制御技術により、まぶたの開度から眠気の兆しを検知し最適な空調と照明制御を行う。
7月からはダイキン工業内の会議室と、NECの開発部隊のオフィスにシステムを導入しフィールド実験を始めている。検証は今後1年程度実施、データの収集を行っていく。
ダイキン工業テクノロジー・イノベーションセンター橋本哲主任技師は「検証により個別空調制御の必要性や運用方法の検証などを進め、ハード面での開発の可能性なども検討しながら数年後の商用化を目指したい」と話す。
今後はフィールド実証を行うパートナー企業を増やしながら早期の商用化につなげていく。
なおNECでは、まぶたの開度から眠気の兆しを検知し様々な制御につなげるIoTの仕組みを2年以内に実用化する方向で開発を進めている。