経済産業省は、「大学発ベンチャーのあり方研究会」における議論の成果として、日本において大学発ベンチャーの質・量を増すためのエコシステムについて報告書をまとめた。
大学の有する知識や人材を強みに新たなイノベーションを起こす存在として、大学発ベンチャーの重要性が高まっている。経済産業省では01年に「大学発ベンチャー1000社計画」を策定し、04年には大学発ベンチャー数1千社を達成。しかし、米国をはじめとした海外に比べ、その数や成長度合いについては大きな差をつけられている。
そこで、経済産業省では、今年2月から大学発ベンチャーのあり方研究会を計5回にわたり開催し、その議論の成果として、「大学発ベンチャーのあり方研究会報告書」をまとめたもの。
報告書では、大学発ベンチャーの創出・成長に向けた(1)人材、(2)資金、(3)知財・知識に関する課題を抽出するとともに、解決に向けた方策を提言。また、わが国全体での大学発ベンチャーの創出・成長のためのエコシステムを醸成する観点から、地方におけるエコシステムの在り方と、大学・大企業に期待される役割をまとめている。
特に、大学発ベンチャーにおいては、コア技術となるシーズについてベンチャーの出口戦略まで見据えた特許取得を行っていく必要がある一方、現在は取得した特許の内容が不十分で事業化の弊害になっているとの指摘があり、大学の知財戦略の強化や特許取得を含めたPoC(Proof of Concept)策定までの資金支援を行うためのギャップファンドの充実の必要性を指摘している。
また、大学の役割として、設立間もなくで資金力の不十分な大学発ベンチャーに対し、大学がライセンスや施設利用料などの対価としてストックオプションの取得を推進することで、当該ベンチャーの成長を支援し、また当該ベンチャーが成功した折には大学への環流を得ることでエコシステムを醸成していくべきと指摘。
さらに大企業がオープンイノベーションの実現に向けて大学発ベンチャーと効果的に連携することによって、大学発ベンチャーの飛躍的な成長を後押しし、日本のイノベーションのエコシステムを形成していくことが期待される。