ICT各社 IoTのセキュリティ拡充

 IoT機器の利用拡大に伴い、IoTに関するセキュリティも重要になってきている。IoTはあらゆるものがインターネットにつながることから、これまでのサイバー攻撃以上にリスクも高まる。昨年まではPOC(実証実験)が多かったIoTも、今年は実導入に移る事例も増えてきた。ICT各社はIoT関連のセキュリティサービスのメニューをそろえ、提案を本格化している。

 IoTは家電や産業機器、自動車など様々な分野で採用する動きが出てきている。その半面、セキュリティに対する課題もあり、情報処理推進機構(IPA)の調査では、開発時のセキュリティ基準が未整備の製品サービスは約4割あった。特に製品のみを販売している場合は、6割以上の製品とサービスにおいてセキュリティ対策が不十分だった。

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 こうした背景もあり、ICT各社はセキュリティ製品やサービスを強化している。IDC Japanの国内IoTセキュリティ製品市場調査によると、16年の市場規模は前年比27.5%増の518億円となり、16―21年の年平均成長率は19.3%で21年には1250億円になると予測している。

 主要セキュリティソフトベンダー各社は、IoTをキーワードにした取り組みを本格化。各社がサービスメニューをそろえ、IoT環境におけるセキュリティ支援を進めている。

 トレンドマイクロは今年度、セキュリティの監視運用を行うSOC(セキュリティオペレーションセンター)の高度化に向けた支援を進めるとともに、IoT向けでサービスプロバイダや機器メーカーとの連携を強化する。IoT機器向けに専用のSOCを展開するほか、通信事業者のネットワークサービスにセキュリティを組み込んだサービス展開もしていく。

 マカフィーは、IoTセキュリティにいち早く取り組み、組込み機器からネットワークまで、IoTで必要となるセキュリティ対策支援を進めている。今年はクラウド環境のセキュリティも含めて総合的な支援を加速させる。

 ラックは、多種多様なIoT機器に対し、ハードからソフト、ネットワークまで総合的なぜい弱性診断を行う「IoTセキュリティ診断サービス」を始めた。サービスはIoT機器の物理的なぜい弱性と実際に通信した状態の診断を行い、結果と改善策を報告する。

 NECは、デバイスをはじめエッジ領域のセキュリティ対策を強化しており、4月からは不正な接続や通信を可視化し遮断できる製品を発売。セキュリティ対策をさらに強固にできるようにした。

 富士通は、IoT基盤の提供とともにセキュリティ対策支援にも取り組む。セキュリティ関連の中核事業会社・富士通ソーシアルサイエンスラボラトリは、昨年末からIoTと組込み機器向けマルウエア対策ソフトを発売。今年はLinux版を投入した。IoT機器の性能を落とさずサイバー攻撃を防御できる。

 日立製作所は、昨年から情報セキュリティの体制を強化しIoT時代に合ったセキュリティ対策支援を始めている。グループの日立システムズは、IoT機器に関するサイバー攻撃検知サービスをはじめ、ITに加え、制御システム、IoTなどのセキュリティインシデントへの早期対応ができる統合SOCを開設し、高度な監視を進めている。

 IoTのセキュリティは政府でも取り組みを進めており、経済産業省と総務省では「IoTセキュリティガイドライン」を策定しているほか、IPAでも手引書を公開しセキュリティ対策を指南している。