センサー不要でどこでも活用可能なリアルハプティクス
慶応義塾大学理工学部システムデザイン工学科の野崎貴裕助教らは、人の動作を遠く離れた場所に伝え、保存し、再現する「リアルハプティクス(RH)」技術を開発した。
好きな時に好きな場所にインターネットを介して感覚を転送し、動作をダウンロードし、利活用できる。卵やポテトチップをつぶさずにつかむことができるRH技術は、慶大の大西公平特任教授が11年に権利化した技術だ。
離れたところからRHロボットでコップを操作
手元側(マスター)と遠隔側(スレーブ)間の通信により、あたかも面前の対象を操作するように遠隔側の対象を操作できる。位置と力の制御を完全に分離し、加速度として設計できる手法を確立、実現した。
LSI化したチップを搭載すれば、どこでも活用できる。03年には内視鏡外科手術用にハプティクス鉗子の実験で、世界で初めて使用できる可能性を示した。
RH技術は周囲の状況に働きかけると、環境からの反作用力として、即時に感じて行動に反映できるため、センサーなどは全く必要としない。車両や高速機械の操作に必要な安全性、操作性を高めることができる。
通信での遅延時間は、目(視覚)や耳(聴覚)より反応が速いのが特徴で、操作者(運転者)は力触覚を通じて素速く、的確な操作が可能となる。建設現場などで、ナットによるボルト締め操作を覚えさせると、ナットの形状が少々変わっても、確実に締め付けることができる。また、ロボットの力の加減が可能で、人間らしい柔らかく、器用で優しい操作を可能とし、行為をデータ化、見える化して記録、忠実に再現した。力の強弱などの加工もでき、人の力を超えた操作も可能となった。
RH技術を用いた義手では、手の部の義手部(スレーブ)による力触覚を足指部(マスター)との相互伝達を活用し手指の力加減が可能となり、ビールをコップに注ぐこともできた。このようなソフトロボット領域では、人類が一体となって支え合う世界が実現できる可能性を秘めた技術といえそうだ。