中国の表示パネル産業の現状


 ここ数年、中国で有機EL(OLED)パネル工場の建設が盛んになってきた。パネル大手の京東方(BOE)、華星光電、小型専門の天馬微電子、信利国際、和輝光電、維信諾などは一斉に有機ELパネルの新規工場建設を急いでいる。

 スマホ、タブレットなどの需要増に伴い、中小型サイズパネルの需要が旺盛。さらに端末機のハイエンド化に伴い、折り曲げ可能なフレキシブル型有機ELディスプレイの需要増が見込まれ、フレキシブル型のアクティブ・マトリクス有機EL(AM・OLED)工場の建設が増加。

 BOEは17年10月、成都に国内初の第6世代AM・OLED工場を稼働させた。綿陽で同じ6世代工場を建設中、来年稼働の予定。また、新たに重慶に同社3番目のAM・OLED工場の建設も検討中。

 テレビ向け大型パネルを主力とする華星光電は近年、小型サイズ市場にも積極的に参入。深センで稼働中の8.5世代LCD2工場を有機EL用に転換できるように調整。武漢に自社初の6世代LCDパネル工場を新設したのに加え、昨年武漢に6世代AM・OLED工場を着工、20年に量産開始、製品の多様化に備える。

 小型パネル専門の天馬微電子は有機ELには積極的。既に5.5世代工場を操業の一方で、第6世代のAM型新工場を建設中。

 香港系の信利国際はこのほど279億元(約4600億円)を投入して、四川省眉山に第6世代AM型工場の建設を開始した。

 維信諾は清華大学系の有機EL専門企業。昨年業界初の折り畳み型有機ELディスプレイを発表して注目された。同社は独自の技術開発で江蘇省昆山の5.5世代工場を稼働中だが、昨年新たに6世代AM型工場を河北省に建設中、今年中の稼働予定。

 業界でもう一社の注目企業は柔宇科技だ。米国への留学者が創業した同社は独自開発の業界最薄(0.01ミリ)フレキシブルパネル技術を保有。量産化に向けて深センの6世代工場を近く稼働させる。年間で有機ELディスプレイ5千万枚を生産する。

 和輝光電は上海市政府出資の有機EL専門メーカー。現在4.5世代工場を稼働させながら、6世代AM型工場を建設中。台湾出身の専門家を中心に創業した同社は高い技術力とノウハウが強みで、業界では最も期待されている。

 韓国LGディスプレイはこのほど有機EL工場の中国進出計画が韓国政府に許可され、広州で8.5世代有機EL工場の建設が確実になった。

 LGに追随して今後、中国への有機ELの新規投資はさらに大型サイズ化すると予想される。

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 国内業界団体のまとめによると、16年以降、中国の有機EL関連投資額は合計2674億元、同期間の世界業界総投資額の80%も占めた。16年以降稼働と建設中の新規工場は10工場、合計年産能力は786万平方メートル、16年当初の29倍になる。

 16年中国企業の有機ELパネル出荷量は600万枚だった。今後新規工場の稼働に伴い、出荷量は18年に1260万枚、22年には4200万枚に増える見込み。従って有機ELパネルの国内調達率は現在の10%未満から20年までには40%に達する見通し。

 生産拡大の一方で、国内有機EL工場の良品率は60%。韓国企業の90%と比べ、はるかに低いのが現状。技術力と良品率の向上が今後の課題になっている。