田中貴金属など

銀ナノインク印刷で曲がるタッチパネルを開発

 田中貴金属工業は産業技術総合研究所フレキシブルエレクトロニクス研究センター・長谷川達生総括研究主幹らの研究成果をもとに、銀ナノインク印刷技術により曲がるタッチパネルを開発。ロールtoロール方式の印刷で極細線の金属メッシュセンサーフィルムを低コストで製造するプロセスを実現した。有機ELディスプレイ、抗菌、触媒、遮熱など機能フィルムへの応用に期待する。

メタルメッシュによる静電容量型タッチパネルの構造
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[引用元:科学技術振興機構(JST) ]

 今回の開発はJSTの産学共同実用化開発事業(NexTEP)の委託を受け、14年4月から17年9月にかけて行われた。

 ディスプレイと一体となったタッチパネルは、スマホ、大型ディスプレイで多く利用されている。最近では平面形状に加え、3次元曲面や曲がるディスプレイが発表され、これらに対応するタッチセンサーが求められている。

 現在主流の静電容量方式タッチパネルには、センサーにITO(インジウム・スズ酸化物)が使用されており、電気抵抗値が高く、曲げに弱いため、大型化や曲面化ができない課題がある。銀や銅などの材料を用いた金属メッシュ(MM)は有望な解決法であるが、4マイクロメートル以下の細線化や低コスト化が見込める印刷は難しかった。

 今回開発した技術は、特殊な銀インクと活性化されたフッ素樹脂表面との吸着反応により配線を形成する新技術。反応機構の解明と製造装置の開発や各工程の条件検討を行い、全工程ロールtoロール方式でMMフィルム(線幅2―4マイクロメートル)を製造するプロセスを実現した。このMMフィルムは20万回(半径2ミリメートル)の折り曲げ試験において抵抗値の変化はほとんどなく、一般的な信頼性試験もクリアした。

 この成果は、フレキシブル電子デバイス市場に向けた、プリンテッドエレクトロニクスの重要な技術革新といえそうだ。