東北大学と産業用冷凍機、各種ガスコンプレッサなどの製造・販売をする前川製作所(東京都江東区、前川真社長)は、NEDO事業で「電力・水素複合エネルギー貯蔵システム」の実証運転を仙台市茂庭浄水場で開始した。
再生可能エネルギーから得た電力を用いて水素を製造、利用する同システムの実用化により、災害時に停電が発生しても安定して継続運転が可能な次世代の浄水場の実現を目指す。
東日本大震災時、非常用電源として多くの自家用発電機が使用されたが、メンテナンス不足による動作不良や燃料不足など、様々なトラブルが発生。仙台市でも、78年の宮城県沖地震の経験から、主要な浄水場には24時間の停電に対応可能な非常用自家用発電装置を設置していたが、東日本大震災時には停電時間が24時間をはるかに上回り、県内の石油備蓄基地の被害や物流の遮断により燃料確保が困難となり、浄水場の機能維持に苦慮した。
地球温暖化対策とエネルギー政策から、12年にスタートしたFIT法により、再生可能エネルギーの導入量、特に太陽光発電については予想以上のペースで増加したが、系統への接続が保留になったり、新規接続契約が停止されるなどの課題が顕在化しつつある。
NEDOは、14年度から「水素社会構築技術開発事業」として、仙台市水道局協力のもと同市茂庭浄水場に水素を利用、安定的なエネルギーを供給する技術開発を実施している。
東北大学と前川製作所は、大容量化や小型化に優れた水電解装置・燃料電池・水素貯蔵システムと、耐久性、即応性、高効率性に優れた電気二重層キャパシタなどの電力貯蔵装置を組み合わせた。
同システムは、平常時の太陽光発電の有効利用だけでなく、非常時のエネルギーの長時間安定供給も可能にする。仙台市茂庭浄水場の20kW太陽光パネルを用いた実証システムが完成、実証運転を開始。外部からの燃料調達に依存しない大容量非常用電源技術を確立し、災害時に停電が発生しても安定した継続運転が可能な新たな浄水場の実現を目指す。