サポートサービス企業各社

眼鏡型ウェアラブル端末で遠隔保守支援

 ICT機器の運用保守などを行うサポートサービス企業において、メガネ型ウエアラブル端末のスマートグラスを活用した遠隔作業支援の取り組みが始まってきている。スマートグラスを使うことで現場の映像を含めた作業情報を遠隔地間で共有できる。現地保守作業員が遠隔地の専門技術者からの指示を受けながら、最適かつ品質の高い保守ができると期待されている。既に一部で実運用に向けた実証実験を進めており、今後は採用の幅が広がりそうだ。

 スマートグラスはレンズ部に様々な情報を表示できる特徴がある。作業指示などの資料をメガネを通して前方に映せるほか、小型カメラと接続すれば、メガネを掛けた人と同じ目線の映像を遠隔地に送れるようになる。

 AR(拡張現実)などの技術を使い、実際の風景に様々な情報を重ね合わせて表示し、現場の人に的確な指示を出せるため、両手を使う保守作業などでの利活用を検討する動きが進んできていた。

 特にICTサポートサービス各社は様々なメーカーの機器の保守サポートを行うマルチベンダー保守を進めており、最近はICT機器以外の保守対応にも取り組んでいる。現場技術者のCE(カスタマエンジニア)にとっては幅広い技術習得が必要になるため、負荷も高まっており、サポート各社は遠隔保守支援により、作業品質の向上と負荷の軽減を目指そうとしている。

 今年に入ると、ICTの保守サポートを行う東芝ITサービスとNECフィールディングがスマートグラスを使った遠隔保守支援の実証を本格化。全国の拠点網で活動するCEにスマートグラスを配布し、遠隔保守支援システムの活用に取り組み始めた。

【 段階的導入を開始 】

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東芝ITサービスが行った技能大会の一幕

 東芝ITサービスはスマートグラスを使った自社開発の遠隔支援ツールの段階的導入を始めた。修理経験などが少ない機器などのトラブル対応を行う際にスマートグラスを使い、バックヤードの専門技術者が遠隔から技術支援しながら、速やかな解決を図ろうとしている。

 永田友久社長は「限られた人員で高い品質を保ちながらマルチベンダー保守をしていくために、遠隔支援ツールの活用を始めている」と話す。現場の技術力の底上げとトラブルの速やかな対応を実現するツールとして期待しており、今年の社内技能コンテスト「2017年度CSコンテスト」の競技にも組み込んだ。

【 仮想的2人作業へ 】

 NECフィールディングはCE支援システム「FITS」を本格稼働するとともに、スマートグラスを活用した保守サービスを始めた。中江靖之社長は「作業品質を均質化すると同時に作業情報の記録と分析ができるため、さらなる品質向上ができる」とみている。

 同社の保守作業の大半が1人作業になっていることから、スマートグラスを使い遠隔地の技術者と連携することで、仮想的な2人作業体制の構築も目指そうとしている。既にスマートグラス50本を配布し、マルチベンダー保守やパソコン系など障害復旧作業などで採用を始めている。

【 協業で実証実験 】

 新たな取り組みでは、NTTデータグループのNTTデータニューソンは7月からスマートグラスを活用した遠隔作業支援システムの実証実験を開始。第1弾として、ヨシダ印刷と協業し、現場オペレータが機器メーカーの保守員から指示を受けてメンテナンスする。メーカー保守員がグラスを装着するのではなく、利用者側の運用者が指示を受けて行うもので、今後、効果検証をしていく。

 スマートグラスを使った保守は品質向上と保守の効率化への期待がかかる半面、課題もある。

 作業指示を受けながら保守する姿は、利用者にとっては不安材料にもなる。当然、利用者側の理解も必要になるため、各社は利用者の合意が得られたところから採用を始めようとしている。