英調査会社IHSマークイットは25日、17年の有機ELパネル市場は、252億ドル(2兆8千億円、16年比63%増)との見通しを発表した。
スマホへの採用拡大と有機ELテレビの販売増加が成長の推進力で、ヘッドマウントディスプレイ、モバイルPCといった分野の需要も堅調に伸び、有機EL市場を下支えするとみる。
同社は、スマホ市場で有機ELパネル需要が拡大してきた理由として、有機ELの特徴であるフレキシブル性を生かし、軽量薄型で様々なデザインの設計・生産することが可能となることを挙げる。韓国サムスンがこのほど発売した有機ELパネルを搭載した「ギャラクシーA8」には、フレキシブル性を活用。表示部の額縁をほとんどなくした高級感あふれるデザインのプレミアムクラスを中心に製品化。従来品との差別化を図っていることなどを挙げる。
今秋には米アップルの「iPhone」にも有機ELパネルの採用が予定されており、中国スマホメーカーも追随することなどを指摘する。
また、同社は大型・高精細といった上位機種のテレビ市場の高まりを背景に、有機ELテレビパネルの出荷が17年から年平均成長率42%で増加。21年には約700万枚と予想する。
パネルメーカー各社はフルHD、4Kといったプレミアムテレビ市場をターゲットに、従来品とは差別化した画面の大型化と高精細化した製品ラインアップを強化しているとする。
ただ、パネル製造コストは高くなり、需要の増加に生産量が追い付かない状況となる可能性もあると指摘する。
唯一のテレビパネルメーカーであるLGディスプレイはUHD(超高解像度)有機ELテレビパネルの出荷を増やすことに注力しており、有機ELパネルの製造コストが比較的高いことから、ハイエンドテレビ市場の中でも、あまり価格に敏感でなく、価格競争力が強くなるとの見方もできるとする。
有機ELパネルメーカーの多くは製造コスト削減のため、インクジェット方式、印刷方式などの低コスト化が見込めるプロセス開発を急いでいるが、プロセスで使用される発光材料に課題があるともいわれている。
同社のジェリー・カン氏は「パネルメーカーは装置、材料メーカーと連携してプロセスの最適化に取り組んでおり、19年までには、量産実現を目指している」と述べている。
また、同社のデビット・シェアシニアディレクタは「サムスン、LG以外のメーカーで日本パネルメーカーは、現在まだ試作段階で量産には時間がかかる。一方、中国メーカーは量産化に向け資金を投入している。スマホに続き、テレビ用パネルにも力を入れており、今後の動きが注目される」と語る。