ルネサスエレクトロニクス

次世代EVのエネルギー効率を向上する車載マイコン向けのモーター制御専用回路技術を開発

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 ルネサスエレクトロニクスはこのほど、次世代EVのエネルギー効率を向上する車載マイコン向けのモーター制御専用回路技術を開発した。米国サンフランシスコで5―9日まで開催されている「国際固体素子回路会議(ISSCC)」で発表された。

 今回開発した技術は次世代EV向け車載マイコンに搭載する専用回路「IMTS(インテリジェント・モーター・タイマー・システム)」。機能安全を担保する周期的検算技術やプログラマブルなモーター角度センサー値補正回路も同時に開発し、次世代EVのエネルギー効率向上に貢献する。

 従来、EVモーターの制御を行うマイコンは、EVモーター制御において必須処理であるフィールド指向制御演算やセンサー補正処理などによるCPUの負荷が大きく、EVの低燃費を実現する「先進制御アルゴリズム」に割り当てるCPU能力が制限されるという課題があった。

 この課題に対し、同社はCPU負荷の高いフィールド指向制御演算の処理を行う専用回路としてIMTSをマイコン内部に搭載。EVモーター制御において重要度が低かった処理をIMTSが行うことで、CPUはエネルギー効率向上につながる先進低燃費アルゴリズムの実行にCPUリソースを割くことができる。

 コアソリューション部の矢田直樹部長は「自動車メーカーにとっては先進低燃費アルゴリズムをどれだけ盛り込めるかが価値となる。IMTSの搭載により余裕の生まれたCPU能力を先進的なモーター制御アルゴリズムに割り当てることで、次世代EVのエネルギー効率向上に大きく貢献できる」と話す。

 IMTSはフィールド指向制御演算処理を専用回路で行うため、世界最速の0.8マイクロ秒で処理することができる。これは同一周波数のCPUでソフトウエアを実行する場合と比べ、10分の1以下の演算処理時間となる。

 IMTSとともに車載搭載要件である機能安全性を担保する回路技術も開発。従来はマイコンを2個使用してシステムを二重化するなどコストアップにつながる対策が取られていた。今回はマイコンに搭載するCPUコアを二重化し、IMTS回路内部を定期的に監視する方式を採用。低コストを維持しながら高速制御と機能安全の両立が可能となる。

 また、外部センサーの誤差を柔軟に補正する回路技術も開発。IMTSはユーザープログラムによりセンサー信号値の誤差をリアルタイムに補正することが可能な構成となっている。

 今回発表した技術は今後、ソリューションとしてIP化し、性能の進化とともにオープン化も見据えていく。