日立化成
4K、8Kテレビを広色域化することが可能な量子ドットフィルムの量産へ
日立化成は液晶ディスプレイの広色域化を実現する光学フィルムとして、量子ドット(注)フィルムの量産・販売を開始する。同社は15年12月、米国ナノシス(カリフォルニア州)から量子ドットを使ったフィルム化技術などを導入した。ナノシス社の量子ドット技術と同社独自の樹脂組成技術の融合により、開発から約1年という短期間での量産・販売に至った。
近年、高精彩な画像(キメ細かい画像)を表示することができる4Kテレビの普及が目覚ましい。
より高精彩な8Kテレビの開発も進む。4Kテレビの世界市場(台数)は16年には約4千万台に達し、20年までに8千万台以上に成長すると言われている(電子情報技術産業協会)。
12年には4K、8Kテレビなどの高精細テレビ向けの新しい色域規格が国際電機通信連合(ITU)によって制定された。ディスプレイメーカーはこの規格に対応できる、より広色域の開発を進めている。
しかし、従来の液晶ディスプレイで広色域化を実現するには、カラーフィルタをより色鮮やかなものに改良する必要があり、ディスプレイの表面輝度(明るさ)が低下するという問題があった。
輝度を上げるためにはバックライトをより明るくするので、消費電力が増えるなどの課題もあった。
同社は消費電力を増やすことなく、液晶ディスプレイの広色域化を実現する量子ドットフィルムを開発、量産体制を確立した。従来の液晶ディスプレイでは達成できなかった色域規格の90%以上を達成することが可能となり、より色鮮やかな画像を表示できる。
同フィルムは液晶ディスプレイの製造工程で、ほかの光学フィルムや基板などを積層するのと同時に組み込むことが可能なため、液晶ディスプレイメーカーで新たな設備の導入が必要ないのが特徴。
今後同社は、テレビ市場に量子ドットフィルムのシェア拡大を進め、それ以外のスマホやタブレットなどのディスプレイ市場にも積極的に拡販し、グローバルシェアの拡大を目指す。
(注)量子ドットとは半導体微結晶で構成される、数ナノメートル−十数ナノメートル程度の粒子で、成分やサイズを制御することで、光の波長を自在に調整することが可能。