産業技術総合研究所
トンネルFETを用いた超低消費電力LSIの動作実証に成功
産業技術総合研究所(産総研)などはNEDOプロジェクトで、0.2─0.3Vの超低消費電力で駆動が期待できる新たな原理のトランジスタを用いたLSIの動作実証に成功した。
今後、同トランジスタを用いた超低消費電力LSIにより、橋梁などのインフラ診断のためのセンサーノードや電池交換不要な生体情報モニターのためのウエアラブルセンサーノードが実用化されることが期待される。
IoTの普及に伴って、無線センサーモジュールの超低消費電力化が重要な課題となっている。
NEDOプロジェクト「エネルギー・環境新技術先導プログラム/ULPセンサモジュールの研究開発」において、産業技術総合研究所など9機関は共同で、超低消費電力センサーモジュール技術構築に関する研究を14―15年度に実施した。
開発した回路は、トンネル電界効果トランジスタ(トンネルFET)を用い、超低消費電力での駆動および高い動作周波数での使用が期待されるトンネル効果を利用したが、N型およびP型からなる相補型LSIの形成が困難なことで、回路動作の実証はできなかった。
今回、同プロジェクトの先導研究で抽出された課題の一つであるトンネルFETの動的回路動作の実証を産総研が独自に実施し、リング発振回路を用いて動的回路の動作確認に成功した(図)。
これにより、トンネルFETを用いたLSIの性能向上を動作周波数で検証することが可能となり、実用化に向けた検討段階に入った。動作速度の改善と動作電圧の低下に向けた研究開発を行い、複雑な回路への応用や動作周波数の向上を目指す。
同技術は5─7日(現地時間)、アメリカのサンフランシスコで開催された国際会議「2016IEEE国際エレクトロニクスデバイス会議」で発表された。