自動車用電子部品 活発な技術・製品開発

 電子部品メーカー各社は、車の電子化/高機能化に向けた技術開発を強化している。特に最近はADAS/自動運転車に照準を合わせた安全系電子部品・モジュール開発や、EV(電気自動車)/PHV(プラグインハイブリッド車)などの環境車両向けのパワー系デバイス開発が活発。車載用高耐熱部品技術の高度化も進んでいる。各社は車の技術革新に照準を合わせた先行開発を強化し、ディファクト化を目指す。

ADAS/自動運転関連部品技術

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車載用マルチGNSSモジュール
(外形寸法20×25×高さ2.6mm)
(アルプス電気)
 自動車業界では自動運転車の開発競争が激しさを増している。日米欧の主要自動車メーカーは、それぞれ20年頃を実用化ターゲット時期とした自動運転車の開発を加速させている。

 自動運転車の実現では様々な技術を複合的化していくことが必要。既に初期的な自動運転技術の緊急自動ブレーキ(AEB)などの普及は始まっているが、今後、「自動運転レベル3」(緊急時のみ人が操作)や「同レベル4」(人が一切運転に関与しない=完全自動運転)を実現するには、より高度な通信技術やセンサーが要求される。これらの実現に向けた電子部品開発が活発化している。

 車車間や路車間の通信を行うV2Xモジュール(IEEE802.11p規格)は、日本市場向けに760MHz帯モジュールが開発・実用化され、欧米市場向けの5.9GHz帯対応品開発も進展している。

 ミリ波レーダーは、新たに79GHz帯レーダーの開発が進む。同レーダーは既存の76GHzシステムと比較すると出力は小さいが、周波数の帯域幅が4GHzと広い。車の近傍のセンシングに優れ、従来は難しかった細い物体(歩行者や自転車など)の検出も可能。将来は76GHzと79GHzの併用による車の安全性能の一層の向上が志向されている。

 高速データ通信モジュールは車載LTEモジュールなどの開発が進んでいる。車載LTEは、車でのクラウド型の情報提供やeCall(車両緊急通報システム)への活用が進む見通し。

 カーナビ用衛星測位モジュールは、既存のGPSに加え、GNSS(全地球航法衛星システム)受信モジュールの開発が活発化している。同受信モジュールは、GPSのほか、ロシアの「グロナス」、欧州の「ガリレオ」など複数の衛星測位システムに対応し、将来の完全自動運転に必須の技術とされる。

 車載カメラは、自動運転車向けにデジタル伝送化と高画素化が今後大きく進展する。これらに対応する高画素カメラモジュールや高速伝送系部品開発が活発化している。

車載用無線通信モジュール技術

 車載用無線通信モジュールは、標準搭載化が進んでいるブルートゥースに加え、最近は車載用Wi−Fiの搭載も本格化している。車載用Wi−Fiモジュールが増加する背景には、スマホを車室内でアクセスポイント代わりに使用するテザリングの広がりや、スマホ内部の情報を車のディスプレイ画面上に映し出したりできるミラキャストへの対応などがある。

 最近は、米アップルのCarPlayや米グーグルのアンドロイドオートなど、車載機器とスマホの新たな連携システムも続々と発表され、これらの機能をキラーアプリとした車載用Wi―Fiの普及拡大が期待されている。

EV/PHV/FCV対応部品技術

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車載カメラ用コネクタ(LVDSタイプ)
(本多通信工業)
 EV/PHV/FCVなどの環境対応車向け電子部品の技術開発も活発だ。EVの普及に向けた課題である1充電あたりの走行距離拡大などを実現するため、LIBや電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ(LIC)などの蓄電デバイスの技術開発が進展。車載LIBやインバータ、コンバータまわり向けに、高電流・高電圧対応部品の開発が進められている。

車載用高耐熱対応部品技術

 自動車の高耐熱ニーズに対応するため、耐熱仕様を向上させた車載電装用電子部品の開発が進展している。車載用モーターでは、エンジンルーム内の各種バルブやポンプの電子制御化の動きに対応し、150℃の温度環境に対応できる高耐熱車載モーター開発が進んでいる。

 エンジンルーム内の温度は100℃近くまで上昇するため、エンジン周辺機器に使用される部品には高度な耐熱技術が要求される。高耐熱車載電装用モーターはこれまで使用温度範囲40―125℃などの製品が投入されてきたが、最近は一段の高耐熱要求に対応し、150℃の高温度環境に対応可能な新製品の開発が進展。

 車載用コネクタでは、125℃の高耐熱に対応可能な車載FPCコネクタなどの開発が活発化している。