高周波部品・モジュール 活発な技術開発

IoTのキーデバイスとして適用用途が拡大

 電子部品メーカー各社は、IoT市場の広がりに照準を合わせ、高周波部品・モジュールの技術開発を活発化させている。IoT技術は様々な産業分野に技術革新を引き起こし、市場を大きく変貌させることが予想されている。各社は高周波技術やノイズ対策技術、微細回路技術などを駆使した超小型で高性能なコンポーネントやモジュールの開発を強化し、新たな需要獲得を目指す。

 高周波の明確な定義はないが、無線通信分野では一般的に数十kHz以上の周波数帯域を高周波と呼ぶことが多い。JEITAの電子部品分類では、高周波部品の主な品目には、スマホ/携帯電話用RFモジュールや、ブルートゥース/無線LANなどのワイヤレス通信モジュール、テレビ/ラジオチューナ、アンテナ、RF/IF用フィルタ、デュプレクサ、電圧制御発振器、アイソレータなどが含まれる。

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0201サイズ(0.25×0.125ミリメートル)高周波
インダクタ(村田製作所)                
 高周波部品の用途は、スマホやタブレットなどの携帯端末、映像機器、家庭用ゲーム機、パソコン/コンピュータ、通信機器、FA機器、自動車、社会インフラ関連など幅広い。

 今後は、あらゆる機器や装置がインターネットでつながる「IoT」の広がりで、高周波デバイスの適用用途拡大が見込まれている。IoTの適用領域は、工場自動化などの生産性向上や、社会インフラの防災・減災対策、セキュリティ対策、医療/介護/ヘルスケア関連、効率的なエネルギー利用、交通システム、物流効率化など多彩。これらのIoT関連分野では、キーデバイスとして無線通信デバイスの需要増大が見込まれている。

 無線通信モジュール

 無線通信モジュールの種類には、Wi−Fiやブルートゥース、ZigBee、Z−wave、EnOceanなどがある。異なる無線通信仕様に1パッケージで対応するコンボモジュール開発にも力が注がれている。最近は、ブルートゥースの低消費電力規格「ブルートゥース4.0」(ブルートゥーススマート)に準拠したモジュールの開発を行う企業が増加している。

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920MHz帯無線ゲートウエイ用モジュール(ローム)
 920MHz帯対応Sub−GHzモジュールの開発も活発。920MHz帯は日本では12年に解禁された。長距離伝送が可能で障害物回避性能に優れ、スマートハウス/スマートメーターやセンサーネットワークなどの分野での市場拡大が期待されている。

 高周波部品各社は、無線モジュールの超小型化に向け、高機能基板への部品内蔵、微細チップ部品による両面実装、高密度解析技術や構造評価技術などを駆使し、パッケージング技術を追求。従来比で大幅な小型化を図った製品開発を進めている。

 無線センサーネットワークデバイス

 高周波部品メーカーは、各種センサーとワイヤレス通信モジュールの組み合わせによる無線センサーネットワークの提案に力を入れている。自社が保有する無線モジュールと小型高精度センサーを組み合わせることで、新たなシステムの構築に向けた提案を促進する。

 具体例としては、ビニールハウスでの高級農作物栽培での温湿度データの遠隔管理、トンネルや橋梁などの構造物の経年劣化に伴う健全度モニタリング、医療分野での見守りセンシング、ホームセキュリティや照明制御システムへの応用などがある。

 社会インフラ用途では、エネルギーハーベスト技術の活用も重要。周囲の振動を電気エネルギーに変換できる振動発電デバイスなどを含めた提案により、付加価値の高いソリューションが訴求されている。

 今後は、HEMS/スマートハウスなどの本格化により、住宅設備分野での無線センサーネットワークの広がりも期待されている。ウエアラブル機器向けでは、各種センサーと無線通信モジュール、アンテナをワンパッケージ化したセンサーネットワークモジュールなどの開発も進展している。

 ToT市場開拓に向けた協業化が進展

 高周波部品各社は、ToT関連事業拡大に向け、IT企業との提携強化に努めている。これにより、ソリューション型ビジネスによる新規事業創出が志向されている。

 具体的には、クラウドシステム基盤などを手掛けるICT企業との協業により、個々の顧客のアプリケーションに合わせた最適なToT環境の提案に力が注がれている。IoTシステムに必要なソリューションを包括的に提供することで、顧客の効果的なデータ利活用まで踏み込んだ提案が志向されている。これにより、従来のモジュール売り切りからソリューション型ビジネスの転換が追求されている。