半導体の接合材 自己修復現象を発見

 阪大とデンソー 適用可能性高める

 大阪大学とデンソーはNEDOプロジェクトにおいて、SiC(シリコンカーバイド)パワー半導体の長期信頼性向上が期待できる接合材の自己修復現象を発見した。
 高温の機器動作環境下で接合部の亀裂が自己修復するというもので、自動車分野などSiCパワー半導体の適用可能性を高めると期待される。

 電力変換器などのパワー半導体応用製品の故障の主要因は、接合部の剥離といわれている。特に高い信頼性が求められる自動車への応用では、接合部の寿命が重要な要素となっている。

 これまで、接合材として用いられていたはんだ材より電気、熱的特性に優れた銀焼結材の開発を行っていたが、剥離寿命が短いのが実用化の課題となっていた。

 今回発見した現象は、銀焼結材の接合層中に生じる亀裂が高温の機器動作環境下で自己修復するというもので、自動車分野への適用可能性を大きく高めた。また、銀焼結材は、高耐熱性、低損失性に優れるため、SiCパワー半導体の適用拡大も期待できる。

 マイクロメートルサイズとサブミクロンサイズのハイブリッド銀粒子ペーストを用い、大気中の接合プロセスによる実験を行った。銀粒子を高密度に焼結し、引っ張り試験片を作製。この試験片にノッチ加工し、わずかな引っ張り荷重をかけることでノッチの先端に鋭い亀裂を作成した。

 この試験片をSiCパワー半導体の動作温度を考慮して、大気中200度および300度で保持。亀裂先端の変化の様子と試験片の引っ張り強度変化を調べた。

 初期亀裂が大きく開いているのに対し、200度で保持した場合、明らかに亀裂が閉じつつある。さらに300度に上げると、広範囲で亀裂が閉じており、亀裂の自己修復現象が観察された。

 比較のため、亀裂を導入しない試験片の強度変化も実験した。亀裂がない試料は時間とともにわずかに強度が減少。これに対し、亀裂導入試験片は初期状態から明らかに回復が見られ、100時間保持後はほとんど亀裂を導入しない試験片と同じレベルとなった。

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亀裂の自己修復の様子