電源用半導体 高効率化を追求、大電流化にも対応
スマホや電子化が進む自動車、産機など省エネ性能高める
電源用半導体はマイコンやメモリーと同様に、あらゆるエレクトロニクス機器に使用されている半導体デバイス。交流を直流にするAC/DCコンバータや電圧を昇降圧するレギュレータをはじめ、モーター駆動、バッテリ充電、マイコンやLSIの動作など電源の制御・供給を行っている。急速に普及拡大が進むスマホや電子化が進む自動車、自動化を支える産業用ロボットをはじめとする産業機器など、あらゆる機器が省エネ性能を高めており、電源の効率化は重要なテーマとなっている。また、回路の微細化やチップ性能の高機能化により、低電圧・大電流化への対応も必要となっている。こうした動きを背景に電源用半導体の技術開発はますます重要になっている。
電源の種類と使用される半導体の動向
5V/3.3VからFPGA、DSP、マイクロプロセッサ
向けにPOLとして、0.6Vまでの低電圧に降圧する
同期整流型降圧レギュレータ(インターシル)
電源は、大別すると直流安定化電源と交流安定化電源がある。直流安定化電源とは、電子機器などの動作に必要な直流の出力電圧・電流を一定の値になるよう制御された電源回路。交流安定化電源は、交流電源の出力電圧あるいは波形を一定に保つことや出力周波数を一定に保つ役割を担う電源回路。直流安定化電源は小型化、軽量化、高効率化、高周波化の要求に加え、待機電力の低減が求められる。
直流安定化電源のスイッチング素子には、主にパワーMOS―FETが使われ、500V耐圧以上ではオン抵抗を従来の1/5程度に抑えることができるスーパージャンクション構造の高耐圧低オン抵抗化が図られるなど、さらなる高効率化を目指して開発が進められている。
整流素子は200V耐圧のショットキーバリアダイオードが開発されており、出力電圧24Vの回路に使用することができる。PFC回路のような高圧回路ではSiCダイオードも使われている。近年ではMOS―FETを使った同期整流も使用されており、低いオン抵抗で高速駆動が容易なパワーMOS―FETの開発が進められている。
サーバー・通信機器向け電源用半導体の動向
スマホやタブレット端末の普及により膨大な情報をクラウド上に保管し、ネットワークを通じて情報をやり取りするケースが増えている。そうした動きを背景に大規模なデータセンターの設置が進み、多様な通信機器の需要も高まっている。
膨大な電力を必要とするデータセンターでは、消費電力の低い通信機器が必要となり、省エネ性能の高い電源用半導体が求められる。また、高速動作を実現するため、高性能のマイクロプロセッサやDSP、FPGA、ASICなどが使用されており、プロセッサ周辺に配置するPOL(Point of Load)コンバータにより低電圧化・大電流化に対応する。
サーバーや通信装置などの機器においては分散給電が進んでいる。
電源の負荷となる各種制御用ICの低電圧・高速動作が進んでいるため、POLコンバータを制御ボード上に複数個配置し給電する方式が主流となっている。
電源の今後の動向と次世代パワー半導体
独自のダブルトレンチ型構造を採用した
SiCトレンチMOSFET(ローム)
今後、直流安定化電源の小型化、高効率化が求められるとともに、再生可能エネルギーの多様化などにより交流安定化電源の需要がますます高まると見込まれる。再生可能エネルギーには、太陽光発電や風力発電、燃料電池など、様々な発電方式があり、効率的な運転制御や各種電圧間を変換するための昇降圧コンバータおよびAC変換のためのインバータなどが必要とされている。
インバータの高効率化と小型化を実現するために、次世代のパワー半導体に期待が掛る。従来のシリコンを用いたパワー半導体は、理論的に性能の限界に近づいており、SiCやGaNなど新たな材料を用いた次世代パワー半導体に注目が集まっている。SiCパワー半導体は従来のパワー半導体に比べて、電力損失を70〜90%削減できる。また、高耐圧特性にも優れており、HEVやEVなどのエコカー、鉄道、産業機器などの用途にも最適。今後の開発動向に期待が掛かる。