ノイズ対策部品 高まる必要性、各社が取組み強化
電子機器や自動車、産機などからのノイズ発生を抑制
ノイズ対策部品の需要が伸びている。周波数利用の多様化、高速デジタル機器の台頭などで、各種機器が誤動作するなど、ノイズが社会的な問題に発展。その対策としてノイズ対策部品の必要性が高まっている。自動車は快適、信頼性、安全などをキーワードに車内ネットワークのノイズ対策が重要。スマホでは超小型のノイズ対策部品の新製品開発が活発化。産業機器分野は太陽光発電、インバータの普及に伴う大型ノイズ対策部品の必要性も高まっている。
電子機器、自動車、産業機械などが、ノイズを発生してはいけない、逆にノイズに耐えられることの両立性を実現することがノイズ対策に必要不可欠な要求。各国ではノイズに関する規制を施行。機器を販売するためには規制に適合する義務がある。ノイズ対策手法の一つがノイズ対策部品を用いるもの。電子部品メーカーは、中長期成長戦略の一環として、ノイズ対策部品事業への取り組みを強化している。
1.自動車のノイズ対策
車載Ethernet向けコモンモードフィルタ(TDK)
自動車は、安全、信頼、快適性などを求めてエレクトロニクス技術による高機能化が進展している。また、EV、HEVといったモーター駆動の自動車の出現で電装化率が飛躍的に高まっている。そこには必然とノイズ源が多く存在し、その対策が必要不可欠になっている。特に電子制御装置(ECU)の搭載点数が増加し、機器間を接続するためのインターフェイスにおけるノイズ対策は必要不可欠。
代表的な車載LAN規格として採用されているのが、CANBUS、LINなど。さらに今後本格的に普及すると見られているのが、FlexRay。車載LANでのノイズ対策で効果を発揮するのがコモンモードフィルタ。
コモンモードフィルタは、高性能フェライト材を用いたトロイダルコア、ドラムコアといったコア形状として、精密巻線が施されている。
車載Ethernet規格向けに、業界最高水準のモード変換特性Scd21の高特性を実現し、業界最小サイズの4.5×3.2×2.8ミリを実現したコモンモードフィルタが開発された。このフィルタは、従来品と比較して最大100MHzまでの広い周波数帯域にわたって15dB〜25dBの優位性を有している。さらに車載LAN規格のCANBUS、FlexRay向けに、3.2×2.5×2.4ミリという業界最小サイズで、高耐熱性、高信頼性を実現したフィルタが開発された。
2.スマホのノイズ対策
スマホでは0402サイズのノイズ対策部品が
用いられる(太陽誘電)
スマホなどでは、これまでの携帯電話、ノートPCに比べ、小型で多機能化しているため、より高度なノイズ対策技術が要求される。
特にLTEは、様々な周波数帯域で採用されるため、LTE端末を開発するには、幅広い帯域でのノイズ対策の必要がある。しかもマルチバンド化するために利用周波数が複数化することから、より高度な対策が必要になる。
さらにスマホは、部品実装密度が高い。様々な回路における隣接部品間の電波干渉の対策を施すことも重要になる。
ノイズ対策部品は、積層セラミックコンデンサをはじめ、インダクタ、LCフィルタなどが、1005から0603、さらには0402サイズまで小型化が進展。
スマホでは部品の実装密度が高まり、機器内部での電磁干渉の対策も重要。スマホで搭載されるフェライトチップビーズは、既に0402サイズまで量産化されている。新たに次世代サイズとして0201サイズが開発された。
LCフィルタは、最近では薄膜技術が注目されている。これは高速差動伝送ラインの対策で有効になるためで、薄膜コモンモードフィルタでは、0.45×0.3×0.23ミリサイズまで小型化。
ノイズ抑制シートは、ノイズの発生源や伝搬路に貼るだけで、効果的にノイズを抑制する。磁性体の磁気損失作用により、磁界成分をより効果的に熱に変えて減衰(吸収)させるもの。厚さ25μ―1ミリの極薄シートで軽量。
3.産業機器のノイズ対策
パワコンで採用される1600A定格のノイ
ズフィルタ(480×200×190ミリサイズ
、
双信電機)
太陽光発電ではパワーコンディショナ(パワコン)という電源が用いられる。ノイズフィルタはこのパワコンを挟んで、発電パネル側のDC側ノイズフィルタ、系統(負荷)側のAC側ノイズフィルタが用いられる。
箱型パワーラインノイズフィルタは、大電流対応、高減衰特性で小型化が求められている。そのため、材料から部品、回路構成までの最適化を図ったノイズフィルタが開発される。
メガソーラーにおけるパワーコンディショナでは定格電流1600A以上の大電流対応ノイズフィルタが用いられる。DC側、AC側のいずれも基本的には小型化設計。