自動車用半導体の需要拡大

ECUやEV/HEVモーター駆動用に採用増える


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車載向けの期待が高まる半導体
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HEVのエンジンルーム。モーター駆動にパワー
デバイスを用いる                   

 電力変換や電力制御に利用されるパワー半導体(デバイス)需要の拡大が期待されている。中でも自動車用途の需要拡大が期待されている。新材料のSiC、GaNを採用した製品も注目されている。

 パワー半導体は交流を直流に変換、電圧を5Vや3Vに降圧するなどし、モーターを駆動させたりバッテリを充電したり、あるいはマイコンやLSIを動作させるなど電源(電力)の制御や供給を行う役割を担う。 

 インバータ用途

 代表的な機能としてインバータがある。インバータは交流をいったん直流に変換した後、再度交流に変換し、周波数と電圧を自在に変える。交流のON/OFFを高速で繰り返すスイッチング動作により、交流のプラス電圧のみを取り出してコンデンサで平滑化することで直流に変える。

 インバータは自動車のモーター駆動用途として期待されている。またエアコンや冷蔵庫などの家電機器、HEV/EV、製造装置など産業機器、エレベータ、エスカレータ、鉄道など多様な分野で省エネ機器として採用されている。

 広がる応用分野

 自動車はパワー半導体を多く使うアプリケーションである。現在の自動車では、エンジン出力を最適に制御するために燃料供給や吸気システム、バルブの開閉、点火時期などを電子制御しており、これらを動かすためのモーターやアクチュエータを各種パワー半導体で制御している。パワー・ウインドーや各種車載電装機器の制御にもパワー半導体が使われている。そして、HEV/EVモーター制御用にインバータが採用されており、需要は急拡大している。

 注目を集める次世代の化合物半導体

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 電気機器の消費電力を小さく抑えるには、パワー半導体に高効率なものを使用することが効果的であり、新しいデバイスの開発が進められている。従来のシリコンを使ったパワー半導体は、シリコンの物性で決まる理論的な性能限界に近づいており、飛躍的な性能向上を期待することが困難になってきた。そこでSiC(シリコンカーバイド)やGaN(窒化ガリウム)などの材料を使った次世代型パワー半導体に注目が集まってきている。

 SiCパワー半導体はSi(シリコン)パワー半導体に比べて電力損失を70―90%削減できるとされている。さらに1kV以上の高耐圧に耐えられることから電力、鉄道、産業用途に適している。特にハイブリッド自動車(HV)や電気自動車(EV)のモーター駆動用インバータでは1kV程度の高耐圧が必要なことから、SiCパワー半導体に大きな期待が集まっている。

 一方GaNは、耐圧は200―1kV程度だが高周波対応が可能という特徴がある。

 既にSiCやGaNデバイスを用いたインバータやパワコンが一部で製品化されている。

ロームはSiCパワーデバイス、SiCショットキーバリアダイオード、SiC MOSFET、SiCパワーモジュール、 SiCショットキーバリアダイオードBare Die 、SiC MOSFET Bare DieなどSiC製品を拡充。

 「第7世代」と呼ばれるより高効率のパワー半導体の製品化も始まった。三菱電機は第7世代IGBTを搭載した「IGBTモジュールTシリーズ」のサンプル提供を開始した。CSTBT構造を採用した第7世代IGBTの搭載により、電力損失とノイズを低減する。汎用インバータ、エレベータ、無停電電源装置などの産業用機器の低消費電力化や高信頼性を実現する。

 富士電機は、パワー半導体の新製品として、第7世代「Xシリーズ」IGBTモジュールのサンプル出荷を開始した。

 1,200V耐圧製品からサンプル出荷を開始し、順次650Vおよび1,700V耐圧製品のラインアップを拡充する。