電子部品メーカー各社は、車の電子化/高機能化に照準を合わせた技術開発の強化に努めている。「安全・安心」「快適」「省エネ」「楽しさ」などを切り口としたカーエレクトロニクス技術の高度化は、車載用電子部品・デバイス需要を大きく押し上げている。
特に最近は、安全・快適ニーズの高まりに対応し、ADAS(先進運転支援システム)の搭載が本格化しつつあり、今後も将来の完全自動運転を目指した技術開発が活発化していく見込み。電気自動車(EV)や燃料電池自動車(FCV)向けのパワー系デバイス開発も進展している。電子部品メーカー各社は、中長期での最重点分野の一つに自動車市場を掲げ、車載用電子部品の技術開発を一段と加速させる。
最近の自動車は、ドライバーや歩行者などの安全性向上のため、様々な安全システムが搭載されている。車の安全システムは(1)アクティブセーフティ(予防安全)と(2)パッシブセーフティ(乗員安全)に大別される。
衝突事故を未然に防止する予防安全系では、衝突防止レーダーや車載カメラなどとセンサーの組み合わせによる高度な運転支援システムの搭載が進んでいる。具体的には、76GHzミリ波レーダーが前方車との距離を測定し、ドライバーに危険を告知したり自動減速を行う追突防止レーダー、車載カメラは道路の白線を認識し本来のレーンに誘導する白線検知システムなどがあり、危険発生時にドライバー自身が減速できない場合に、自動減速/自動停止を行う緊急自動ブレーキ(AEB/エマージェンシーブレーキ)の搭載も進展している。
AEBは、日本では2014年11月から22トン以上の大型トラックで搭載が義務化された。このほか、高級車での搭載が増加し、最近は軽自動車での搭載車種もみられる。
ミリ波レーダーは、現在実用化されている77GHzミリ波レーダーに加えて、新たに79GHzミリ波レーダーシステムの開発が進められている。79GHz帯レーダーは、既存の77GHzシステムと比較すると、出力は小さいが、周波数の帯域幅が4GHzと広いのが特徴(77―81GHz)。このため、車の近傍のセンシング能力に優れ、従来の77GHzシステムでは難しかった細い物体(歩行者や自転車など)の検出も可能となる。将来は、77GHz帯と79GHz帯の両システムを併用することで、車の安全性能の一層の向上が志向されている。
このため、電子部品メーカーでは、車の安全性向上に照準を合わせ、79GHzミリ波レーダー関連デバイスや車載用高画素カメラ部品、各種センサー、無線通信モジュールなどの開発を加速させている。
最近の自動車は、「安全」や「快適」などをキーワードとした高機能化が進み、車内外の通信ネットワーク化および通信速度の高速化が進展している。
車載用無線通信モジュールは、車内通信用にブルートゥースモジュールなどの搭載が本格化しているが、加えて、最近は今後の需要増が期待される車車間や路車間通信が可能な「V2Xモジュール」など、車外通信用無線モジュール開発に着手する部品メーカーが増加。V2Xモジュールとして、IEEE802.11p(5.9GHz)規格対応モジュールなどが開発されている。
車載用高速データ通信モジュールでは、車載用LTEモジュールなどの開発が進んでいる。車載用LTEは、自動車でのクラウド型の情報提供やeCall(車両緊急通報システム)への活用などにより、今後の需要増大が予想される。
カーナビ用衛星測位モジュールは、既存のGPSに加え、GNSS(全地球航法衛星システム)受信モジュールの開発が活発化している。GNSS受信モジュールは、既存のGPSのほか、ロシアの「グロナス」、欧州の「ガリレオ」など複数の衛星測位システムに対応可能なモジュール。GNSSは、将来の完全自動運転に必須の技術としても重要視される。
EV/PHV/FCVなどの環境対応車向け電子部品の技術開発も活発。EVの本格普及に向けた課題である1充電あたりの走行距離拡大などを実現するため、LIB(リチウムイオン二次電池)や電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ(LIC)などの蓄電デバイスの技術開発が進展。
車載LIBやインバータ、コンバータまわり向けに、高電流・高電圧対応部品の開発が進められている。車載インバータの性能向上のための新型電流センサーなどの開発にも力が注がれている。