MEMS技術の発展とともに、多様なMEMSセンサーが製品化されている。用途もスマホやウエアラブル端末などのモバイル機器をはじめ自動車、社会インフラ、ヘルスケアなど様々な分野へ広がっている。
MEMSは主に半導体微細加工(一括加工)技術を用いて作るため超小型で、高精度・高品質な機構部品が得られるという特徴がある。また、一つの部品を作るのと同じ手間と時間でたくさんの構造を同時に作り込むことができ大量生産による低コスト化も可能になる。
MEMSは一つの基板にセンサーや信号回路、アクチュエータなどが搭載された3次元の構造体であり、入出力が電気信号以外にエネルギーや機械変位、物理量など、多岐多様にわたることも大きな特徴。デバイスの微小化が可能で、狭いケースに収まったり、狭い場所で稼働することもでき、携帯機器や複雑な装置内部の保守検査機械などに適している。
【圧力センサー】 受圧部のシリコンダイヤフラムが圧力を受けたときの応力・変位を電気信号に変換し圧力を計測する。自動車エンジンなどの圧力測定、血圧計、気圧計、ガス圧計などに広く普及している。
【加速度センサー】 加速度センサーはセンサー内に大きな「おもり」を梁などで支えた構造を持つ。加速度によって「おもり」に発生する慣性力が支持構造を変形させ、その変形を様々な方式で検出する。自動車エアバックの衝撃検知、スマホ、ハードディスク落下検知やアミューズメント分野などに応用されている。
MEMS技術は社会の様々な場面で活用が始まっている。今後期待される一つにセンサーネットワークを活用した常時・継続的な監視を行うスマートモニタリングがある。
道路インフラのモニタリングはその一つ。橋梁の劣化を振動から検知する広帯域振動センサー、道路法面の土砂崩れ等の異常変化を検知する法面変位センサーの開発などが行われている。いずれも自律型電源で、無線ネットワークでインフラ管理センターと結ぶ。
産業インフラのモニタリングでは都市インフラ(電気、ガス、上下水道、情報、エネルギー)の安全な保全のためのセンサーモニタリングシステムの開発が進んでいる。
センサーネットワークにはMEMSや無線モジュールの自律型電源が必要で、高効率マイクロネルギーハーベスタの開発も進む。近い将来には年間で1兆個のセンサーを生産・消費する「トリリオンセンサー社会」が到来すると言われている。MEMS技術の新設計・新工法を導入して、コインサイズの面積で、発電効率を従来比2桁以上に高めた、10mW級の環境発電素子の開発可能性が探られている。