プリント配線板 「成長分野への新製品、新技術の開発活発」
スマホ向けビルドアップ多層板やADAS向けミリ波レーダー基板など
プリント配線板は、成長分野における新製品、新技術の開発が加速している。スマホや高機能モジュール分野では部品内蔵基板を含めた高密度化技術が進展。自動車では、先進運転支援システム(ADAS)などの最先端技術領域におけるミリ波レーダー基板などの開発が活発化。産業機器向けは大電流対応、高耐熱などの高信頼性基板の開発が活発化してきた。
スマホやモジュール用基板は、ビルドアップ技術の高度化で微細パターン化、薄型化が進んでいる。
スマホでは、エニーレイヤー工法のビルドアップ
多層板が用いられる(日本シイエムケイ)
ビルドアップ多層板はコア層の両面に配線する層を積み重ねる工法が一般的だが、最近では、全層レーザービアおよびフィールドめっきによる信頼性の高いエニーレイヤー基板がスマホなどで採用されている。
一般的なビルドアップ多層板は、ベースになるコア層の上下に絶縁層を積み上げる工法。コア層にはドリルによってスルーホールが開けられ、銅によるスルーホールめっきが施される。上下には貫通しないブラインドビアホールを設けて各層間の導通を確保する。
エニーレイヤーはドリルでスルーホールを形成するコア層を必要とせず、レーザーを用いて小径のビアホールだけで自由に各層間を接続するもの。
エニーレイヤーのビルドアップ多層板は、ハイエンドスマホや高機能モジュールなどで採用が広がってきた。L(ライン)/S(スペース)は50μm/50μm以下の微細化技術を適用。レーザービアのビア径は75μm以下に小径化。しかも基板厚みは、6層で0.3ミリメートル厚内外を実現している。
モジュール小型化へ部品内蔵基板採用
モジュールの小型、高機能化には、部品内蔵基板技術が採用されるようになってきた。部品内蔵基板は、基板内に受動部品やICを内蔵し、その上部全面に配線層が設けられ、様々なデバイスを3次元実装するもの。
部品内蔵基板では、薄型化を追求したICだけを基板に内蔵するIC内蔵基板をはじめ、剛性に優れ、ノイズへの耐性が向上し、しかも高い熱伝導率を持つため、ICチップなどから発生する熱を効果的に放熱できる銅コア内蔵基板など、主要各社が独自の技術を採用。
これによって、部品内蔵基板はブルートゥースモジュールをはじめ、カメラモジュールなど、スマホなどに搭載されるモジュールを中心に生産規模が拡大している。
最近では、IC内蔵基板を用いることで3.5ミリ角×1ミリサイズを実現したブルートゥース スマート モジュールが開発された。また、銅コアを内部に使用した部品内蔵基板を使ったスマホ向けにイメージセンサーを2つ搭載したダブルレンズカメラモジュールが開発された。
自動車分野は、パワートレイン系、車両制御系、ボディ系、情報通信系など、アプリケーションごとに技術ニーズが異なり、それぞれに最適に設計されたプリント配線板が供給される。
中でも最近注目されているADASに絡んだミリ波レーダーユニットやカメラモジュール向けの開発が活発化している。
ミリ波レーダーユニットは、アンテナと半導体チップなどを搭載した制御回路で構成。これまで2つの基板を必要としていた。セラミック基板が主体に用いられてきた。
ブルートゥーススマートなど、モジュールで
部品内蔵基板の採用が広がる(太陽誘電)
最近のプリント配線板メーカーが開発しているのは、ユニットの小型化や低コスト化などの視点から複合多層プリント配線板。高周波特性が求められるアンテナ用基板に高周波特性に優れた材料を用い、半導体チップなどを実装する制御部に、FR―4などの汎用的な高密度実装用基板材料を使用するもの。
電装化率の高まりから搭載個数が増加する車載ECUは、搭載環境が室内からエンジンルーム、さらにはエンジン直搭載へと変化することによって、耐熱性に優れたプリント配線板が要求される。小型化の要求から、パターンスペックはこれまでのL/S=130μm/170μmから、同100μm/100μm、さらには同75μm/75μmへと微細化が進展するものと思われる。
産業機器分野では、太陽光発電向けなどの大電流対の厚銅プリント配線板が使用されている。太陽光発電は、ソーラーによって発電された直流電力を交流電力に変換するパワーコンディショナが用いられる。そのため、プリント配線板は、大電流を扱うことができるプリント配線板が要求されている。
一般的なプリント配線板の回路厚みが35μm内外であるのに対して、100―500μmという銅厚の回路を形成することで大電流への対応を可能にしたものが厚銅基板。大電流や高電圧などの電気的な負担が大きい回路において、縦方向に厚みを持たせ、回路幅を狭くでき、電子機器の小型化にも効果を発揮する。