M2M(機器間通信)やIoT(モノのインターネット)、スマートコミュニティ構築など、様々な市場で機器がつながる世界が広がり始めた。あらゆるモノやコトがデジタル化し、無線やインターネットでつながる世界。業界をリードする大手電子部品メーカーは、「クローズドな世界」から「コネクテッド世界へ」展開する「The Connected World」が広がると予測。インターネットに接続するデバイス市場は13年の100億個から20年には500億個と5倍にまで拡大。データトラフィック量も増え続け、全世界のモバイルデータトラフィックだけで13年の月200万テラバイト(TB)弱が15年に同400万TBに倍増。17年には1000万TB/月となり、18年は1600万TB/月に増大し、新たな高速、高効率の無線通信システムが求められてくる。
家電はもちろん、産業機器、メディカル・ヘルスケア、インフラなどあらゆる分野で無線通信が大きな市場を形成している。多くのデバイスが無線につながる環境下では、つなぎたい相手と混線せずにつながる無線通信技術が不可欠となる。欧州で規格化され普及が進むBluetoothをはじめ、無線LAN規格のWi−Fi(IEEE802.11)、ZigBee、Sub−GHz(特定小電力無線)、Wi−SUN、EnOcean、RFIDなど多様な規格が国際規格として制定され、特徴に応じた用途の棲み分けが進んでいる。Bluetoothは当初携帯電話や周辺機器の近距離接続用に採用が進んだ。13年に低消費電力規格のBluetooth Low Energy(Smart)が発表され、ウエアラブル機器やヘルスケア機器などの小型機器へと採用が広がった。
村田製作所はサイズ、消費電力を同社従来比4分の1にし、コイン電池で数カ月から数年間駆動する超低消費電力のSmartモジュールを開発するなど、IoTの実現に向けた同規格への期待は大きい。
Wi−Fiはデータの通信速度がBluetoothに比べ1ケタから2ケタ速く、通信距離も約100メートルと長いためPCや周辺機器、スマホ、タブレット端末、車載機器などで採用されている。
次世代Wi−Fiと言われているWiGigも大容量コンテンツの高速、低遅延無線伝送用として用途提案が始まっている。2.5GHzWi−Fiで6分15秒かかる4.7GBのDVD1枚のデータをWiGigなら19秒で送れる。33分20秒かかっていた25GBブルーレイ1枚のデータでも1分40秒で送ることができるとして、パナソニックや村田製作所などがWiGigモジュールの開発を進めている。
NICT(情報通信研究機構)が中心となって推し進めているWi−SUNは、日本では特定小電力無線と呼ばれる920MHz帯を使用し、Wi−Fiと比較して低消費電力で障害物に強く、通信距離も約500メートルと長い。これらの利点からスマートメーターをはじめスマートコミュニティ構築での提案が始まっている。東京電力がスマートメーターの無線通信方式に採用。汎用性も高いことから家電製品やHEMSなどのシステムでも採用の動きにある。IoTやM2Mなどでの応用も進んでいる。
ロームは15年1月から量産を開始。同時にアールエスコンポーネンツ、チップワンストップ、コアスタッフの3社でWi−SUNモジュール本体と各種評価ボードの業界初となるインターネット販売を始めた。
照明や空調などのスイッチセンサーとして欧州を中心に、既に40万棟以上の採用実績があるEnOceanもロームが環境発電によって電池なしで使える無線規格としてM2MやIoT市場に積極的に提案。
無線モジュールの普及に伴い、小型化、省電力化、複数の通信システムの複合化、無調整化、無線の高性能化などの開発、製品化がさらに加速してきた。有限の電波資源を有効活用し、非常時のバックアップインフラとして期待されるコグニティブ無線モジュールの登場も期待されている。電子情報技術産業協会(JEITA)が2月27日に東京、3月6日大阪で開催した「2024までの電子部品技術ロードマップ」報告会でも無線モジュールの中で今後期待される無線モジュールとして紹介した。複数の無線方式の中の空き周波数を利用する。複数の無線方式が選択できるエリアで時間、周波数で帯域によって変化する利用状況、通信の混雑状況を認識。最適な運用状態やパラメータを選択し、その環境に適応した通信を行うインテリジェントな無線通信として今後、各社で取り組みが進むと予測されている。