電源用半導体、活発な新製品開発

  ウェアラブル機器から家電、産業、自動車、鉄道車両向けまで

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負荷容量と動作周波数によるパワー半導体の応用例

 電源用半導体はDC/DCレギュレータ、DC/DCコンバータ、AC/DCコンバータ、MOSFET、パワー半導体、ダイオードなどがある。用途は家電、情報機器、携帯情報端末、産業機器、医療機器など、電源を必要とする機器のほとんどに採用されている。電子機器の開発で電源の高効率化は重要なテーマとなっており、電源用半導体の重要性が高まる。

 省エネは日本はもとより世界各国においても国家的課題。BEMS、HEMS、省エネ型情報機器、エネルギー貯蔵技術などの開発が進む。電源用半導体の果たす役割はますます重要になっている。

 電源用半導体の開発加速

 電源用半導体の新製品開発が活発化している。産業機器向けデバイスは高信頼性や長期供給、小型化のニーズが高まっている。ロームは産業機器向けDC/DCコンバータIC「BD9E300EFJ−LB」を製品化。高周波スイッチング動作による周辺部品の小型化、同期整流方式による損失の低減と大電流低損失プロセスによる発熱量の軽減で小型化を実現した。  最近では、消費電力の大きいASIC、マイクロコントローラ、FPGAを搭載する電子製品が増加している。  インターシルはシングル・パッケージに完全に集積したDC/DC電源モジュール「ISL8270M」を製品化。最大25Aの連続出力を可能にした。放熱特性を向上したオーバー・モールド高密度アレイ(HDA)パッケージを採用しており、基板からの直接放熱が可能である。

 低消費電力のウエアラブルデバイス

 腕時計型、リストバンド型、アンクレット型、指輪型、衣服型、眼鏡型、ヘッド装着型など様々な用途でのウエアラブル機器が登場しつつある。軽量/省スペースと長期間稼働を実現するため低消費電力が大きなテーマ。  トレックス・セミコンダクターは、ウエアラブルデバイス向けに超低消費電流、降圧同期整流PFM DC/DCコンバータ「XC9265シリーズ」を製品化した。

 用途が広がるパワー半導体

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DC/DCコンバータ

 パワー半導体は家電、コンピュータ、自動車、産業用装置、鉄道など、あらゆる機器に幅広く使われ、これらの機器への搭載比率拡大が期待される。自動車ではエンジン出力を最適に制御するために燃料供給や吸気システム、バルブの開閉、点火時期などを電子制御しており、これらを動かすためのモーターやアクチュェータを各種パワー半導体で制御している。  多くの電気機器機にはインバータが搭載されており、そのインバータにはパワー半導体が使われている。インバータは1960年代にサイリスタを利用したものが商品化された。現在はIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)を主回路に用いた装置が一般的になっている。さらにSiCやGaNにパワー素子を用いた製品も登場しつつある。

 注目を集める次世代パワー半導体とその課題

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新しい電源用半導体の開発と市場への提案が
活発になっている

 従来のシリコンを使ったパワー半導体は、理論的な性能限界に近づいており、飛躍的な性能向上への期待が困難になってきた。そこでSiC、GaNなどの材料を使った次世代型パワー半導体に注目が集まるようになっている。  このうち、SiCパワー半書体はSiパワー半導体に比べて電力損失を70〜90%削減できると予想されている。さらに1kV以上の高耐圧に耐えられることから電力、鉄道、産業用途に適している。特にハイブリッド自動車(HV)や電気自動車(EV)のモ―ター駆動用インバータでは1kV程度の高耐圧が必要なことから、SiCパワー半導体に大きな期待が集まっている。  一方GaNは、耐圧は200−1k程度しかないものの高周波対応が可能という特徴がある。このことから、デジタル家電の次世代パワーデバイスとして注目されている。