「ノイズ測定と関連測定器」高まる重要性、需要も拡大

  自動車の電子化や電子部品の高密度実装化などでノイズ対策が課題に

画像1
〔写真1〕電波暗室
画像1
〔写真2〕EMIテストシステム

 自動車のエレクトロニクス化、IoT(モノのインターネット)に伴う無線技術の広がりでEMC(電磁両立性)に対する対策が課題となっている。EMC測定や評価を行うサービスや関連計測器の需要が高まっている。

 ノイズの問題は、電子機器の誤動作や機能低下、放送・通信の受信影響が考えられる。

 電子機器が(1)ノイズを出さない、(2)ノイズ影響を受けない、(3)(電子機器自体が)自らのノイズに影響されないことが求められる。 エミッション対策(EMI)とイミュニティ対策(EMS)の両方が要求されている。EMIとEMSを、電磁両立性(EMC)と呼ぶ。

 エミッションとは、電子機器などから外部にノイズを出す現象。この測定には、エミッションで使用するEMIレシーバと呼ぶCISPR(シスプル、国際無線障害特別委員会)で規定した試験ができる測定器を使用する。

 イミュニティは、外部から出ているノイズにより、電子機器などが影響(誤動作など)することを指す。アンプを使用し、規格に定められた試験周波数や試験レベルの妨害波をアンテナから放射する。EMC用途のアンプは、数kHzから数GHzという広い周波数レンジにわたり、入力信号を高いゲインで増幅し安定して出力する必要がある。

 自動車のエレクトロニクス化の加速や電気自動車(EV)普及で、安全・安心に向けたEMC対策の取り組みが強まっている。電波暗室に自動車1台を収納し評価する。

 要因の一つに、車載モーターの搭載増加がある。ミラーやウインドウ、ワイパー(フロント・リア)だけでなく、パワーシートやABSなど上級高級車では約100個が搭載されている。これによりノイズ評価ニーズが高まっている。

 一方、電子部品の高密度化やクロックの高速化、低消費電力などの強い要求からノイズ対策の重要性が増している。微細化設計により、基板の配線間が近接。これによる放射ノイズがみられるようになっている。

 スマホをはじめとする小型モバイル機器でもマルチバンド化、高機能化により需要が増大しているノイズ対策部品で高密度実装化に対応した超小型部品の開発、製品化が進んでいる。チップフェライトビーズでは0201サイズ(0.25×0.125mm)の世界最小品が開発、製品化されている。従来の0402サイズ(0.4×0.2mm)品に比べ体積で75%ダウンを実現。既に量産出荷されている0201サイズのチップ積層セラミックコンデンサ、チップインダクタとあわせて、あらゆる電子機器で必要とされる電子部品において0201サイズの超小型品が揃っている。

 周波数特性に優れたコンデンサ・フェライトビーズを組み合わせたLC複合型EMI除去フィルタの開発、製品化も進んでいる。kHz帯からGHz帯にいたる幅広い周波数域に対応したDCラインノイズフィルタのLC複合型EMI除去フィルタも製品化され、各種電子機器のDC電源ラインにおけるノイズ対策用をはじめ、自動車、医療機器、FA機器、制御機器、通信機器、デジタルAV機器などに採用されている。

 認証試験と同じ項目で測定・解析

 ノイズ源の特定や解析、認証試験と同等の試験項目(プレ・コンプライアンス)、正式なロゴ認証試験(コンプライアンス)といた計測器の需要もある。評価コストや早期市場投入に向けた時間短縮などにより、プレ・コンプライアンスの提案が広まっている。

 EMC測定や評価を行うサービスは、各国のEMCに関する認定取得を背景に、需要が高まっている。EMCサービスの規模は、年間120億から150億円とみている。

 Wi−Fiなど多彩な無線技術の登場と家電機器などの搭載、エレクトロニクス実装が増加する車載関連など、活況を呈している。

 電波暗室などの設備を備え、電磁障害や測定課題など、これまで培ったノウハウを生かしたEMCに関するコンサルタント、各国試験所認定支援など特徴あるビジネスを展開。評価試験と申請代行を行っている。

 また、EMC測定に加え、安全試験サービスも行うなどサービスの充実が図られている。

 こうしたサービスだけでなく、電波暗室の設計・施工から評価・メンテナンス、計測器の校正サービスも手掛けている企業もある。