東レ 厚さが40マイクロメートル蛍光体シート開発

  白色LEDデバイスの輝度、10%以上向上

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井口 所長

東レは13日、白色LEDデバイスの輝度を10%以上向上させる蛍光体シートを開発したと発表した。

同シートを用いることで、品質の安定化および製造のプロセスコストの削減にも貢献するという。製品の長期信頼性を確認。1月から販売を開始した。当初は月産1万枚(10センチメートル角型サイズ)でスタート。近い将来10万枚とする予定。

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開発した蛍光体シート

 白色LEDは液晶ディスプレイ用バックライト、スマホのフラッシュ、家庭、店舗、街灯用照明などに加え、自動車用ヘッドライトや車内照明に用途を広げている。

 発光の仕組みは、青色LEDと黄色蛍光体あるいは赤・緑色蛍光体を組み合わせて白色発光させる方法が主流。実装プロセスでは蛍光体分散液を用いた塗布(ディスペンス)方式スプレーコーティング方法が採用されている。

 しかし、1─5Wと大きな電力が必要とされる照明、車のヘッドランプ用途などでは高輝度化の需要が強い。従来の製造方法では、蛍光体の沈降・凝集により白色光の品質のばらつきが大きいという問題と、蛍光体にレアアースを原料とするため、高コストであるなどの課題があった。

 同社は、独自の蛍光体分散技術により厚み約40マイクロメートルに成形した白色LED用蛍光シートを開発。シリコーン樹脂の屈折率(1.6―1.8)を制御することにより、LEDの輝度を10%以上向上。品質のばらつき低減と蛍光体の使用量を削減することに成功した。

 電子情報材料研究所の井口雄一朗所長は「樹脂の屈折率制御と大粒径蛍光体の分散技術で、高輝度化を達成した。蛍光体の高濃度充填による薄膜形成ができるため従来法に比べ放熱性に優れ、投入電力を上げれば、さらに高輝度化もできる」と語った。

 井口所長は「LEDの用途が拡大するにつれ高密度化、低消費電力、低価格の要請から、実装工程では、電極を基盤にワイヤレスで直接接合するフリップチップボンディング工法などが注目されている。今回開発した蛍光体シートは、LEDチップの蛍光面だけに効率的に蛍光体層を形成できるのと熱接着型シリコン樹脂を用いているので、ウエハー一括貼り付け、フリップチップ側面貼り付け、バーチャルチップ個片貼り付けなどのプロセスで接着剤を不要にできる。ラミネート装置やプロセス技術を組み合わせ、ハイパワー照明や自動車用ヘッドランプなどへの本格採用を目指す」という。