モバイル機器に向けたデバイス技術の開発が活発である。今年のスマホ出荷台数は、13億台を超えると推定されている。また、先進国の伸びは減衰傾向となり、中国とインドのような新興国が市場を牽引。スマホとタブレット、PCの出荷台数を比較すると、既にスマホはPCの3倍となっており、その差はこれからさらに開く。また15年内にはタブレットも出荷台数ベースでPCを逆転するとの予測もある。一方、先進国のスマホ市場は成熟に向かっている。そのため今年のスマホ市場を牽引したのは中国であり、インドやインドネシアなどの新興国がその後の市場牽引役となる。
スマホで使われる半導体および電子部品は多種多様である。タッチパネル、液晶パネル、高性能プロセッサ、大容量DRAM、フラッシュメモリー、各種無線モジュール、GPSモジュール、加速度センサー、電子コンパス、ジャイロセンサーなど、機能の多様化に伴い数多くの半導体・電子部品により構成されている。
スマホの筐体はこれら多数のデバイスにより飽和しつつあり、搭載部品や機能モジュールへのさらなる「小型化」要求は厳しさを増している。新たに注目されるウエアラブル機器への採用も見込み、電子部品点数の削減や搭載面積を縮小するモジュールの展開が注目されている。
また、モバイル機器に搭載される電池の容量は年を追うごとに向上しているが、まだ改善の余地は残されており、「低消費電力化」のニーズは高まっている。バッテリ駆動時間を延ばすため、電源関連デバイスの開発やワイヤレス給電技術も進む。
「高機能化」では、ディスプレイの大画面化と高精細化、高精細カメラ搭載などスマホの高機能化の進展に対応して、CPU性能やグラフィック性能の向上が求められる。最近の傾向としては、ヘルスケア関連アプリ搭載の機器も増えている。そうした機能を実現するために、各種センサーの搭載も積極的に行われている。
高性能なプロセッサを搭載したスマホ・タブレットなどの高機能端末の普及が進むにつれ、通信機能と融合した様々なサービスが提供されるようになった。ストリーミング、ナビゲーション、クラウド対応など多様化も著しい。モバイル端末に共通して求められる機能として、種々のネットワークへの対応が重要となっている。モバイル端末のフロントエンド部に搭載される電子部品では、通信機能の混載や搭載バンド数の増加に伴って、小型化の検討が進む。電子部品およびデバイスのモジュール化および複合化への展開は、その解決策として期待されている。
新たな技術のイノベーションとして、モバイル機器用のワイヤレス給電技術もその一つ。ワイヤレス給電の標準化団体であるWireless Power Consortium(WPC)がワイヤレス給電の規格策定を行う。ワイヤレス給電技術は、充電時の電源コードを不要にし、機器コネクタの防水性・防塵性の向上を見込めるため、モバイル機器市場のみに限らず産業機器、車載市場などに広がりを見せている。またWPCのように標準化されたシステムを用いることで、一つの給電装置を様々な端末に使用することが可能となる。その一方で、スマホなど5Wクラスの電力をワイヤレスで送受信する際に発生する熱対策が課題となる。
最近のスマホには回転ベクトルをはじめ、近接、方角、磁場、直線加速、輝度、ジャイロ、重力、加速度、気圧、温度といった多くのセンサーが使用されている。これらによって、GPS機能を用いたナビゲーションの利用が可能になっているほか、手に持つ向きで画面を自動回転させたり、周囲の明るさなど利用環境に合わせてスマホの設定を自動的に変えたりといったこと高付加価値な機能が実現される。ジャイロセンサーは3次元の角加速度を感知するセンサで、従来カーナビやゲーム機などに搭載されてきた。最近はスマホでの採用が進み、ナビゲーション機能やゲームでの利用だけでなく、指先の動きを感知するジェスチャ認識などにも活用される。さらなる高機能・高性能のセンサをめざした開発が急ピッチで進む。