インダクタ 進む高性能化、活発な新製品開発

  高周波回路用からノイズ対策、電源回路向けまで小型・薄型化

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【写真1】 高周波回路には高Q特性の高周波
インダクタが用いられる(TDK)
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【写真2】 小型、大電流対応のメタル系パワー
インダクタは、1608サイズまで小型化(東光)
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【写真3】 ノイズ対策用途に次世代チップとして0201 
サイズのチップフェライトビーズが開発された(村田製作所)

 インダクタの新製品開発が活発化している。高周波回路用、ノイズ対策、電源回路向けまで小型、薄型インダクタの搭載点数が多いスマやタブレット向けに相次いで新製品を投入している。

 スマホなどではGSMや3G、LTEなど多数の通信規格が搭載され、高周波回路には従来以上に高い性能が求められる。それぞれの通信規格に対応したバンドごとにインピーダンスマッチング回路を搭載することが求められ、ノイズ抑制、高効率化を実現する必要がある。

 このようなインピーダンスマッチング回路に使用されるインダクタは、高周波域でも特性を保持することが求められる。一般にインダクタは、小型化すると直流抵抗が増加してQ値が低下してしまうため、高周波回路の性能向上を十分に果たすことができなかった。

 そこでTDK、村田製作所、太陽誘電などでは、ファインライン形成技術や磁気回路シミュレーション技術、積層技術などを高度化し、最適なパターン形成を実現。0402サイズという超小型サイズと高いQ値を両立している。

 高いQ値を確保できる巻線タイプの場合、積層タイプや薄膜タイプに比べて、小型化が難しい。その中で、サガミエレクなど数社が1005サイズでの供給を可能にしている。

 さらに次世代サイズとして、村田製作所は薄膜技術によって、0.25×0.125×0.125ミリメートルサイズ(0201サイズ)を実現した。

 スマホは、多機能化でICの搭載点数が増加。電池の駆動時間を延ばすために小型、高効率のDC―DCコンバータが多く搭載されている。

 パワーインダクタに要求される条件は、機器の小型、薄型、軽量化および多機能化に対応して小型、低背でなければならない。駆動時間を延長するために高い電力変換効率を持ち合わせる必要がある。さらに低ノイズが求められる。


 各社がメタル系パワーインダクタ開発

 従来のニッケル(Ni)―亜鉛(Zn)系フェライトコアに銅線を巻回したフェライト系巻線パワーインダクタには、小型化すると直流重畳特性が下がり大きな電流が流せなくなるという課題があった。そこで直流重畳特性を大幅に改善できる鉄(Fe)―シリコン(Si)系などの金属系磁性材料の成形プロセスを新たに開発するとともに、新巻線工法および構造を融合させることで、大電流対応と小型・低背化を両立したメタル系パワーインダクタが開発されている。

 スマホ向けメタル系パワーインダクタは、東光、TDK、太陽誘電をはじめ、アルプスグリーンデバイス、スミダコーポレーション、東京コイルエンジニアリングなどが供給している。

 サイズは2×1.6ミリメートル、2.5×2ミリメートル、3.2×2.5ミリメートルサイズが商品化。厚みは0.8ミリメートル、1ミリメートル、1.2ミリメートル。さらに1.6×0.8ミリメートルサイズまで開発された。

 スマホやタブレットはマルチバンド化をはじめ、多機能化が進展し、しかも部品実装技術は一段と高密度化している。そのため、高度なノイズ対策技術が強く求められている。ノイズを放射しない、ノイズから機器を保護するという両面での対策だけに止どまらず、機器内の部品間でのノイズ干渉の対策も施す必要がある。

 その代表的な製品としてフェライトビーズが用いられている。さらにノイズ対策で重要になるインピーダンスも高周波帯で大幅に改善したチップビーズインダクタが開発された。0402、0603、1005サイズなどの小型品。

 TDKは、業界最高水準のインピーダンスを実現した信号伝送回路用チップビーズ2種を開発した。1つは新しい磁性材料を用いることで、インピーダンスピーク周波数を2.5GHz帯まで拡張。2.5GHzで3000Ωという高インピーダンスを1005サイズで実現。

 もう1つは100MHzでのインピーダンスが600Ωと1000Ωの2種類の高インピーダンス品を0603サイズでラインアップ。1チップで広い周波数帯域のノイズを効率よく除去することが可能になった。

 さらに次世代サイズのチップビーズとして、村田製作所は0.25×0.125×0.125ミリメートルサイズ品を開発した。