抵抗器の技術が高度化している。成長分野であるスマホ、タブレット向けに極小チップ抵抗器の開発が活発化。自動車分野では小型化とともに高信頼性化に向けた新製品が相次いでいる。さらにスマートメーターや太陽光発電など、産業機器向けに向けた新製品開発への取組みが活発化してきた。
スマホやタブレットは小型、薄型、軽量で高機能化に向けた新製品開発が進んでいる。そのため、基板への部品実装技術は高密度化を一段と強めている。
チップ抵抗器は、これまで小型化シフトし、現在ではスマホのマザーボードでは1005サイズを中心に0603サイズ、0402サイズが混載されている。スマホに搭載されるGPSやブルートゥースなどの各種モジュールでは0402サイズの採用が定着化し、モジュールそのものが小型化している。
さらにモジュールでは一部で部品内蔵基板を採用するケースも見られ、基板に内蔵するチップ抵抗器は、厚みを0.15ミリメートルに抑えた低背タイプが用いられるようになった。この超薄型チップ抵抗器は、銅電極の採用によりビアホールめっきとの高い接続信頼性を実現している。
抵抗器各社の次世代チップの開発も活発化。0402サイズよりもさらに極小チップとして、ロームをはじめ、KOA、北陸電気工業など主要チップ抵抗器メーカーが相次いで次世代チップとして0201(0.2×0.125ミリメートル)サイズを開発した。
今後、ウエアラブル機器など、さらに小型機器が出現。各社ではマウンタやはんだ関連などの企業との信頼性確保など、本格的な普及に向けた活動を活発に展開している。
自動車向けの高信頼性抵抗器の開発も活発化している。アクチュエータやバッテリ回路では、電圧・電流を制御するための電流検出用抵抗器が必要。金属板抵抗体が製品ボディを兼ねるパワー低抵抗チップ抵抗器で、1mΩ前後の極めて低い抵抗値を実現している。これにより定格電力3W、独自電極構造を採用することで6Wを確保するなど、大電流の検出が可能になった。
電流を高精度で検出するには、アンプ回路のゲイン設定用抵抗器の精度も重要である。この用途には、高精度薄膜チップ抵抗器が適している。抵抗値許容差±0.05%〜、抵抗温度係数±5×10−6/K〜という高精度を保ちながら、定格周囲温度85℃、使用温度範囲−55〜+155℃で使用可能な耐熱性と耐湿性を向上した金属皮膜チップ抵抗器が供給されている。
さらにチップ抵抗器は、硫化ガス濃度が高い環境下で使用された場合、内部電極の硫化による断線という現象が確認されている。
これに対応した耐硫化チップ抵抗器は、角形チップ抵抗器、角形サージチップ抵抗器、 チップネットワーク、さらに内部電極材料に硫化しない特殊材料を採用することによって、耐硫化性能に優れた長辺電極タイプなどが揃っている。
エンジンの制御回路向けには、サージ耐性、耐パルス性に優れた耐サージ高電力チップ抵抗器が求められている。これに対して、ESD±15kV印加試験(新JASO条件)で抵抗値変化率±5%以内の耐性、一般品に比べて約3倍の耐性を確保したパルス特性、最高使用電圧150V、最高過負荷電圧200V。使用温度範囲−55〜+155℃を実現した耐サージ抵抗器が開発されている。
産業機器分野では、スマートメーターや太陽光発電向けの抵抗器技術も進展している。スマートメーターは商用電力系統との接続点に位置するため、厳しいサージ環境にさらされる。ワンパルス限界電力が汎用チップ抵抗器に対して5倍以上高い耐サージチップ抵抗器が開発された。サージやパルスに対する耐性に優れ、定格電力も向上しているうえ、抵抗値許容差が±0.5%〜の高精度品がラインアップされている。
太陽光発電における電流監視(電流検出)用途に対しては、電流検出用低抵抗値抵抗器が用いられている。1m―20mΩまでの低抵抗値領域をカバーし、抵抗値許容差は±1%、抵抗温度係数は±75×10−6/K〜と高精度。また、高電力タイプのパワー低抵抗チップ抵抗器は、定格電力3Wで抵抗値0.5mΩのラインアップにより、数十Aの電流検出を可能にしている。
電圧監視(電圧検出)の用途に対しては、最高使用電圧の高い高電圧チップ抵抗器が使用される。1608サイズの最高使用電圧は同サイズの汎用チップ抵抗器に比べて約7倍高い。