電子機器の小型、薄型、軽量および高効率化の追求を背景に、電源技術が進歩している。今後も需要拡大が期待されるEV/HEVといった自動車向けや、産業機器のインバータ、太陽光や風力発電、LEDなど、エネルギー分野向けの新製品開発が活発化している。また、スマホやタブレット端末向けの超小型、薄型DC−DCコンバータの技術進歩も目覚ましい。さらにその技術を生かし、ウエアラブル端末向けの技術開発も急速に進む。
電源においては、変換ロスを低減し、高効率化を推進する技術開発が従来進められてきた。現在では、さらに技術が進展している。全負荷時での効率改善、軽負荷時の高効率やコントロールOFF時の待機電力の削減など、高効率で省エネルギーな電源が台頭してきた。
自動車分野はEV、HEVの生産台数が増加する見込みで、今後さらに自動車における電源技術の重要性が高まると予想される。インバータ、DC−DCコンバータは、振動、衝撃、温度、湿度などの耐環境性に優れ、小型、軽量、高効率化などが求められる。EV、HEVなどでは、モーターや二次電池を駆動するインバータやコンバータといった電源が必要。数百Vの高電圧メーンバッテリから電装系14Vに変換する小型、高効率DC−DCコンバータ、モーターを駆動するインバータ、いずれも小型、軽量、高効率化技術が進展している。
パワートレイン用高圧バッテリから補機用低圧バッテリへの変換、充電および補機への電源供給に用いられるDC−DCコンバータでは、出力14.5V/100Aを体積600ccで実現した製品が使用されている。電力密度は2W/cc。小型化で重視した技術的ポイントは、低損失トランス用フェライトコアと放熱プリント配線板の採用にある。
スマホやタブレット端末などモバイル機器の分野では、小型、軽量でありながら、高機能化技術が急速に進展している。モバイル機器の場合は、様々な半導体デバイスを駆動させるための超小型かつ低背のDC−DCコンバータモジュールが搭載される。高効率で低電圧駆動するための回路技術、部品選定が重要とされ、高密度実装技術を使った電源モジュールの開発が活発化している。また、ウエアラブル機器に向け、部品内蔵基板技術を用いることで、実装面積の省スペースに寄与する技術開発も盛んに行われている。
産業機器向けでは、省エネ化に寄与するインバータの応用が、一大市場として成長している。インバータは、直流を交流に効率よく変換する電源回路で、各種製造装置、工作機械、産業機器など、モーター駆動機器における省エネ化を目的に採用が広がっている。
太陽光発電では太陽電池から発電された直流の電力を交流に変換するためのパワーコンデョナが用いられる。このパワーコンディショナは、昇圧のためのDC−DCコンバータ、商用電源への供給のためのDC−ACインバータから構成される。高周波スイッチング技術による小型、高効率化に向けての開発が活発化している。パワーコンディショナには絶縁型と非絶縁型がある。これまではアナログ制御の非絶縁型が多かったが、最近ではDC−DCコンバータの制御にデジタルを用いた技術が採用されるようになり、小型、軽量、高効率で、しかも経済性、信頼性の高いパワーコンディショナが登場している。さらに、今後の直流給電の普及に備えた動きも表面化している。ここにきて高効率の絶縁型の双方向DC−DCコンバータが開発された。
LED関連では、一般照明に加えサイネージや看板・表示板などのバックライトとしての利用が広がってきた。LED表示器では、低電圧で大電流が必要となる。そのために高効率のスイッチング電源が求められる。また、LEDの長寿命化に対する長期信頼性の確保が必要不可欠である。そのため、使用する電子部品も長寿命タイプが用いられ、パッケージにも防塵、防水の性能が求められる。同時に軽量化による設備工事の負担を軽減する。