ワイヤレス通信用半導体
スマホやP C 、車載や省エネ関連、医療、産機向けなど

 ワイヤレス通信技術の応用は、携帯電話・スマホをはじめ、無線LAN、ブルートゥース、GPS、RFID(無線タグ)ZigBee、UWB、WiMAX、センサーネットワークへと広がりを見せている。スマホ/タブレット端末やパソコン/パソコン周辺機器などの情報通信機器向けのほか、車載関連、DSC、環境/省エネ関連、医療/ヘルスケア関連、産業機器など様々な用途の無線モジュールとして技術開発が活発化している。近年では多様なワイヤレス技術の登場に伴い、人と人を結ぶコミュニケーションだけでなく、機器と機器とを結び通信する「マシンtoマシン」(M2M)といった使用も広がりを見せており、さらにIoT(物のインターネット)時代の幕開けに寄与する技術開発も進み、様々な通信規格も登場している。そこでは引き続き、超小型・低消費電力といった使い勝手の良さがキーワードとなる。

<ウエアラブル機器に対応するブルートゥーススマート>

画像1
ブルートゥーススマート対応の小型モジュール

 ワイヤレス通信用半導体の技術開発の活発化は、組み込まれる無線モジュールの需要拡大、用途拡大を支えている。グローバルマーケットにおいては、スマホやタブレット端末などのIT機器の需要拡大と高機能化、さらに非IT機器分野での無線通信機能の搭載拡大が需要を押し上げていくことが予想されている。このためワイヤレス通信用半導体各社は、家電製品や産業機器、省エネ/環境関連、医療/ヘルスケア関連などの用途に向けた技術開発を推進する。これらの市場に最適化させたWi−Fi、ブルートゥース、ZigBee、Z−Waveなど各種ワイヤレスデバイス開発を活性化させている。

 その中でも、ブルートゥースの低消費電力規格「ブルートゥーススマート」に準拠したモジュール開発が注目されている。ブルートゥーススマートは低消費電力が特徴で、バッテリ駆動で使用され、小型・軽量・低消費電力が求められている携帯機器に最適な規格である。

<省エネを実現する920MHz帯無線>

 さらに今後の普及に対しさらに期待が高まっている分野として、920MHz帯の特定小電力無線がある。背景としては、あらゆる分野で省エネの意識が高まっており、各国で効率的なエネルギーの利用に向けた取り組みが拡大していることが挙げられる。特に住宅分野においてはHEMS(Home Energy Management System)に注目が集まっている。機器同士をインターネットなどのネットワークにつなぎ、家庭内で消費されている電力を「見える化」や、一括で管理・制御を行うことで省エネを実現するシステムなどである。

 構築したネットワークとセンサーを組み合わせることで、温度や湿度、照度などの生活環境情報を読み取り、火災報知器、防犯装置、モニター端末、空調、照明といった家電および水道やガスメータなどと通信を行い、自動で調整を行うことで快適で安全な生活への提案も多い。

 家庭内のネットワーク構築には、既存住宅への設置コストを考えると無線によるネットワーク構築が容易で最適となる。HEMSに用いられるセンサーネットワークに使用される電波帯として、920MHz帯が注目されている。920MHz帯は、既存の無線との電波干渉を起こしにくく、低消費電力でありながら長距離のデータ通信が可能な点が利点である。

<多様化する用途に応じたデバイスメーカーの取リ組み>

 車載用では、制御ソフトウエアまでカバーしたオールインワンタイプのブルトゥースモジュールの開発に力が注がれている。薄型テレビやBDレコーダなどでは双方向通信が可能なRF方式リモコン用にZigBee RF4CEプラットフォーム準拠の2.4GHz帯アンテナ一体型RFモジュールの製品化も進む。RFID関連ではRFIDリーダ/ライタ用デバイスの開発も進む。ZigBee/EnOceanなどを駆使した次世代照明制御システムなども開発されており、無線化による調光用配線の簡素化やフレキシビリティの向上、施工期間の短縮/低コスト化に貢献している。

 デバイスメーカーは、モジュールの小型化・高密度化技術に対応した製品開発を進める。モジュール側では高機能基板への部品内蔵、微細チップ部品による実装、解析技術や構造評価技術など、様々な先端パッケージング技術が追求される。また、最適なモジュール設計が求められる中、ソフトウエア技術やアンテナ解析技術など、製品を構成する技術に対するニーズも多様化、高度化している。