エネルギーハーベスト技術

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センサーネットワークの電源などへの利用が
注目されるエネルギーハーベスト技術

 エネルギーハーベスト(環境発電)とは、太陽光や照明光、機械の発する振動、熱などのエネルギーを採取し電力を得る技術である。特に身の回りにあるわずかなエネルギーを電力に変換し活用することを目的とする。具体的には電磁波利用、力学的エネルギー利用、熱エネルギー利用などがある。

 エネルギーハーベストの概念を広くとらえると、太陽光発電、風力発電、水力発電、波力発電などの自然エネルギーを利用した発電も含まれる。しかしながら、技術として注目が高まっているのは、自然エネルギー発電向けの技術ではなく、小型の電子機器向けの独立型電源となりうるμW〜W程度の出力のエネルギー変換技術である。

<センサーネットワークへの活用>

 エネルギーハーベスト技術で採取されるエネルギーは非常に小さいため、得られるエネルギーも限られている。この利用について、センサーネットワークの電源として使用することが注目されている。

 センサーにエネルギーハーベストを適用する際の課題は、環境発電で得られるエネルギーが、現状ではまだ不安定であるということ。照明用のリモコンスイッチでは、押したときだけ駆動すればよいため、必要な時に電力がないという心配はない。しかし、モニタリングのために用いるセンサーは、定期的にセンシングした情報を送信する必要があるため、必要な時に十分な電力が得られないという可能性がある。解決策として、より消費電力の低いセンサーの開発が必要であることはもちろん、他の技術を組み合わせるという方法も必要となる。

<蓄電池技術>

 一つの方法は、蓄電池である。蓄電池は、センサーが電力を必要としない間、発電した電力をためておき、その時々に回収するエネルギーだけでは足りない分を補うために用いる。蓄電池については、電気自動車向けやオフィス・工場向けの定置用蓄電池など大型のものに注目が集まるが、環境発電においても重要な役割を果たす。

 環境発電向けの蓄電池には、PCやデジタルカメラなどのモバイル機器用の蓄電池や、電気自動車用や定置用の大型蓄電池とは異なる性質が求められる。まず、環境発電で得られる電力は小さいため、自己放電が小さいことが必要である。また、充電と放電を繰り返すため、充放電を繰り返しても劣化しにくいことも重要となる。ウエアラブル機器に用いる場合は、薄型にできることも必要。既に環境発電に特化した蓄電池メーカーもあり、今後、環境発電における蓄電池の重要性がますます高まると思われる。

<ワイヤレス給電技術>

 また、環境発電で得られるエネルギーの不安定性を解決するために活用できると考えられている技術がワイヤレス給電である。ワイヤレス給電は、電力を電波の形でケーブルを用いずに供給する技術である。この技術を、電力が余っているセンサーから電力が不足しているセンサーに電力を供給し不足を補うために用いる。耐水性インクジェット紙にシルバーのインクで印刷するだけで、電波を電力に変換するアンテナと回路ができてしまう技術など、低コストで電波を電力に変換するためのデバイスを作る技術も開発されてきている。

<環境発電技術とIoT>

 このように、他の技術をうまく組み合わせることで安定的にセンサーに電力を供給することが可能になれば、これまでリアルタイムなセンシングができなかったケースでも、よりリアルタイムに近いセンシングが可能となる。さらに、センサーネットワークを通じて様々なデータを収集し、より高度なサービスを提供する取り組みが各所で行われているが、それが大量のエネルギー供給を必要とするものであれば、現実的にはそうしたセンサーネットワークの構築は困難となる。

 IoT(=モノのインターネット)が新しい市場として注目されている。2020年までに500億〜750億のモノがつながるとの予想がある。その市場においても、キーとなるであろうセンサーネットワークの構築に究極の省エネを実現するエネルギーハーベストの技術は必要不可欠であると考える。