パワー/電源用半導体 広がる市場、活発な技術開発

家電、コンピュータ、自動車、太陽光発電、燃料電池など幅広く利用

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 パワー半導体は、家電、コンピュータ、自動車、鉄道など、あらゆる機器に幅広く使われ、これらの機器への搭載比率拡大が期待できる。また従来の発電・送電インフラに加え、再生可能な風力発電、太陽光発電、燃料電池などの分散型電源の登場により、さらなる市場成長が見込まれる。

 多くの家電には、直流電力を交流電力に変換するインバータが搭載されており、そのインバータには必ずといっていいほどパワー半導体が使われている。パワー半導体を使うインバータはキメ細かい周波数制御に欠かせないため、エアコンだけでなく洗濯機、蛍光灯、LED照明、IH調理器などにも使われるようになっている。

 自動車もパワー半導体を多く使うアプリケーションである。現在の自動車では、エンジン出力を最適に制御するために燃料供給や吸気システム、バルブの開閉、点火時期などを電子制御しており、これらを動かすためのモーターやアクチュエータを各種パワー半導体で制御している。パワー・ウインドーや各種車載電装機器の制御にもパワー半導体が使われている。そして、ハイブリッド自動車や電気自動車のモーター制御用にインバータが採用されており、需要は急拡大している。

<注目を集める次世代パワー半導体とその課題>


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 現在、パワー半導体が扱う電力の範囲は数Wのスイッチング電源からGW級の直流送電までに達し、身の回りのさまざまな電子機器にパワー半導体が使われている。しかし、従来のシリコンを使ったパワー半導体は、シリコンの物性で決まる理論的な性能限界に近づいており、飛躍的な性能向上を期待することが困難になってきた。そこでSiC、GaN、ダイヤモンドなどの材料を使った次世代型パワー半導体に注目が集まるようになっている。

 このうち、SiCパワー半導体はSiパワー半導体に比べて電力損失を70〜90%削減できると予想されている。さらにSiCは、1kV以上の高耐圧に耐えられることから電力、鉄道、産業用途に適している。特にハイブリッド自動車(HV)や電気自動車(EV)のモーター駆動用インバータでは1kV程度の高耐圧が必要なことから、SiCパワー半導体に大きな期待が集まっている。一方GaNは、耐圧は200〜1k程度しかないものの高周波対応が可能という特徴がある。このことから、デジタル家電の電源回路などの用途に適していると考えられている。

<力率改善回路と高効率を両立するAC/DCコンバータIC>


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 電子機器の開発において、電源の高効率化は、年々重要なテーマとなっている。また電力エネルギー問題を抱える日本だけでなく、全世界の発電・送電する電力会社においては、力率改善機器の普及は、高効率と共に非常に重要である。ロームは、力率改善回路と高効率を両立するPFC制御機能を内蔵したAC/DCコンバータIC(BM1C001F)を開発した。力率改善回路(PFC)コントローラを任意電力でON/OFFする機能とPFC出力新制御方式を搭載し、待機電力を大幅に削減を実現するともに、国際規格のEnegy Star6.0が定める水準のクリアに貢献。

<中耐圧向け高圧型DC/DCコンバータIC>


 産業機器に向けた半導体チップ(IC)への取り組みを強化するという戦略を採用する半導体メーカーは多い。市場の将来性が極めて有望であり、再生可能エネルギー対応機器、車載用電子機器、医療用電子機器、FA機器などの市場で、いずれも、今後大きな伸びが期待されている。そうした中、インターシルは、同期整流に対応しながらも、コストを低く抑えるという要求に合致した中耐圧向け降圧型DC/DCコンバータICを製品化した。

<車載USB電力の実現に貢献するDC/DCコンバータ>


 Maxim Integratedは、高密度の集積を活用して車載専用のUSB電力、USB充電エミュレーション、ポート保護を提供し、PD充電電流の増大による問題を解決する、スマートUSBスイッチを備えた新しいDC/DCコンバータを開発した。USBはほぼすべての自動車に普及しようとしているため、自動車OEMは、あらゆるユーザーのPDで利用可能な、完全機能、低コスト、高速充電のUSBポートを必要としている。同社のDC/DCコンバータは、メインのUSB電力ポートの検出、給電、および保護を行い、あらゆる自動車の追加USB充電ポートを非常に小型の外形サイズで容易に実現可能にする。