電子化が一層進む自動車の安全、安心、快適性を追求
【自動車用半導体】 活発な製品開発
自動車の電子化が一段と進んでいる。東京ビッグサイトで開催中(12月1日まで)の第43回東京モーターショー2013では、自動車メーカー各社が自動運転のデモンストレーションを実施。自動走行、無人駐車や自動追従走行などを披露している。日産自動車は高速道路での実証実験を神奈川県で始めた。高速道路での合流、車線変更など自動運転の実力を披露した。ハイブリッド車(HV)、電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド車(PHV)燃料電池車(FCV)の最新エコカーを支える半導体やセンサーなどの電子部品、モジュールの進化のスピードはますます速くなっている。
自動車の安全、安心、快適を追求するための半導体や電子部品、モジュールに求められる技術要求は年々高くなっている。高品質、コスト削減と合わせて求められる様々な技術要求を満足させる取り組みが各社で加速している。
プロセッサメーカーと周辺半導体、電子部品メーカーとの協業による車載ソリューションの提案もそうした動きから活発になっている。ロームが今月15日に発表したインテルAtomプロセッサE3800製品ファミリー用パワーマネジメントIC(PMIC)も産業機器向けに加え、車載向けの最適なソリューション提案をインテルとともに進めていくものだ。インテルと長年にわたり共同開発体制で最適なプラットフォーム構築に取り組んできた協力体制の成果のひとつといえる。
9月に発表したフリースケール・セミコンダクタ・ジャパンとロームとの協業も日本とグローバルの車載市場に向けて包括的なソリューション提案の協業として注目されている。両社の製品の特徴を生かした多彩なリファレンス・デザインの提供などを行い、自動車メーカー、電装メーカーが製品開発を簡単かつ迅速に進めるための多用な選択肢を提供。設計負担の軽減とともに車載システムの高品質化、コスト削減などにも貢献できるとみている(写真)。
プロセッサメーカーのリファレンスボードに自社の半導体、電子部品が採用され、推奨部品リストに載ることが自動車メーカー、電装メーカーへの販売につながる、として半導体、電子部品メーカー各社はプロセッサメーカーとの連携を強化、リファレンスボードへの搭載にこれまで以上に力を入れている。
EV、HEV、PHVの普及、自動車のエレクトロニクス化の進展により、マイコンやメモリーは搭載個数が増加している。これらの電力供給源である電源ICでは高効率化、大電流化、高信頼性が大きな技術開発テーマになっている。電源ICは一般的にLDOレギュレータが使用されてきたが、効率が悪く、大電流化が難しいという課題がある。このため高効率、大電流供給が可能なDC/DCコンバータが採用されているが、LDOレギュレータに比べ外付け部品が多く、実装面積が大きく、回路設計も難しいという課題を持ち、簡単で使い勝手の良い高効率電源ICの要求が高まっている。電源ICメーカーではこれらの要求に応える新製品を発売。自動車のさらなる低消費電力化に貢献。車載機器の小型化、設計負荷軽減に対応。ロームでも車載向けマイコンやDDRメモリーなどの電源に適した位相補償回路を内蔵した小型、高効率の電源ICを開発。外付け部品点数を従来比80%削減し、セットの電源設計で難しかった位相補償調整も不要にした。同期整流方式を採用し高効率も実現。
自動車の低消費電力化においては、エンジン停止時などの待機時に消費される電流(暗電流)を低減する開発が進んでいる。ロームでは耐ノイズ対策を行った独自の回路設計で暗電流を従来品に比べ80%低減し、6μAにした耐圧50Vの車載用LDOレギュレータを開発、商品化している。バッテリへの負荷を軽減、長期間のエンジン停止状態にも十分に耐える電源回路を構築できる。
SiCパワーMOSFETを駆動できるゲートトライバー
EV、HEVの普及が進む中で、インバータ回路への要求も広がっている。動力部のインバータ回路の小型化に対しては業界初のシリコンカーバイド(SiC)パワーMOSFETを駆動できる絶縁素子内蔵ゲートドライバーをロームが開発、商品化している。これまで外付けしていた絶縁素子フォトカプラに代えて半導体プロセスでシリコン基板上にコアレスパルストランス(オンチップトランスファーマー)を形成。0.6μmBiCDMOSプロセスを採用したゲートドライバーチップ、インターフェイスチップとともに業界最小SSOP―B20Wパッケージに収めた。従来のカプラー方式に比べ消費電力を大幅に削減でき、EV、HEVに必要なすべての保護機能や品質要求を提供している。
さらにEV、HEV向けには車載用コンセントに使用されるACインバータや充電機器向けの世界初の車載用漏電検出ICも開発されている。ロームが今夏から量産を開始した漏電検出ICはEV、HEVを非常用電源として利用する際や車内で100V電源として使用する時の漏電を検出、新たな電力供給源としてのEV、HEVの安全性を高めている(図参照)。
欧米で搭載が進んでいる昼間点灯用のデイタイム・ランニング・ライト(DRL)向けの半導体の需要も拡大している。DRL用LEDドライバーもその一つ。ヘッドランプのロービーム、DRLのLEDランプを1つのLSIで駆動できるロームのLEDドライバーなどは好評を得ている。