自動車の中でもHEV、PHEV、EVといったエコカーの普及が加速している。これまでの電子化進展による部品の搭載点数の増大に加え、電池を含めてモーター駆動に関連する電子回路の搭載に伴い、電子部品の市場裾野が拡大。電子部品メーカーは、今後成長が期待されるエコカーを対象に駆動系におけるパワーデバイスへの取り組みが活発化する見通し。
回路部品
エコカーは、モーターや二次電池を駆動するインバータやコンバータといった電源が必要になり、そのためのパワー用部品の需要が増加している。高電圧メーンバッテリから電装系14Vに変換する小型、高効率のDC―DCコンバータは、水冷式、空冷式ともに小型、軽量、高効率化技術が進展している。低オン抵抗のスイッチング素子の採用をはじめ、低損失フェライトによる高効率トランスや高周波低インピーダンスの平滑コンデンサなどの技術進歩が背景にある。
また、モーターを駆動するインバータにおいても小型、軽量、高効率化技術が進展。キーデバイスである高圧コンデンサとしては、フィルムコンデンサとアルミ電解コンデンサが用いられているが、アルミ電解コンデンサは設置スペースを考慮した長円形の製品が登場。750Vという超高電圧化を実現した例も見られる。
一方のフィルムコンデンサは、誘電体蒸着加工技術、電極接続技術を応用した小型、低ESR、低ESL技術が進展。アルミ電解、フィルムのいずれもモジュール化技術を応用することで、大容量化、高電圧化をはじめとする多彩な形状、仕様へのコンデンサバンクがカスタムで最適設計されるようになってきた。
インバータにおけるキーデバイスとしてのリアクタはコア材料から加工技術まで新しい動きが表面化している。コア材料はケイ素鋼板、メタル系、フェライトなど様々。リアクタの小型、高効率への対応が活発化する。また、加工技術としては平角線を縦巻きするエッジワイズ巻き技術が多く採用されるようになってきた。
エネルギー回生、EV用急速充電器の蓄電用途等で注目されているのが電気二重層キャパシタ。同製品はF(ファラッド)単位の大容量で繰り返し充放電が可能。しかも環境に優しいという特徴がある。
電気二重層キャパシタは、減速エネルギー回生システムでの採用が本格化する。今後、アイドリングストップなどへの応用も期待できるなど、同キャパシタにとって自動車分野は一大市場に成長することが期待されている。
接続/変換部品
自動車の高機能化やEV化により、コネクタ、スイッチ、モーター、リレーなどの車載用接続部品/変換部品の高付加価値化や搭載点数増も進展している。
コネクタは、カーナビ、ETCなどの情報通信機器向けや、アンテナ同軸コネクタ、MOSTなど車内光LAN用コネクタ、カメラモジュール用などの需要が拡大しており、車載用高速データバス対応コネクションシステムの提案が活発。HEVやEVでは、車載用バッテリやインバータまわりで高耐圧対応の新たなパワー系コネクタが求められ、各社の技術開発が活発化している。
スイッチは、車室内での機器操作系用に、安全性や信頼性、操作感触を重視し、なおかつ車載内空間の品位を損なわない高級感のあるスイッチの技術開発が進展している。
人と車の快適なインターフェイスを実現するデバイスとして、車載用タッチパネルの技術革新も進展している。従来の抵抗膜方式に加え、車載用静電容量方式タッチパネルの搭載も始まりつつある。安全性と良好な操作性の観点から、フォースフィードバック機能付静電容量方式タッチパネルなどの開発も進められている。
リレーは、小型のプリント基板リレー開発に加え、HEVやEV向けに、高容量のパワーリレー開発が活発。車載用スピーカの高級化・高音質化や、燃費改善のための軽量化も進展している。
高周波デバイス
車の製造現場では、コックピットモジュール、ドアモジュール、シートモジュールといったモジュール生産方式が進み、これらを構成するエレクトロニクスモジュール/ユニットには、様々な高周波デバイス技術が活用される。車の高機能化に伴う高度エレクトロニクス化、統合化、システム化の流れは、車載用高周波デバイスの需要を大きく押し上げている。
車載用ブルートゥースは、ハンズフリーや音楽プロファイルなどの専用ソフトを付加したオールインワンモジュールの開発に力が注がれている。このほか、タイヤ空気圧モニタリングシステム(TPMS)、パッシブキーレスシステム、ETC用RFモジュール、車載用デジタルTVチューナ/デジタルラジオチューナなどが製品化され、車とスマートフォンの連携に照準を合わせた新たな車載用高周波部品の開発も活発。車載カメラモジュールは、従来の30万画素モジュールに加え、高解像度の100万画素品も搭載が始まりつつある。