センサーMEMS応用した新製品の開発活発化

 センシングデバイスは、電子機器などの高性能、高信頼性、高機能化を実現する上で、必要不可欠なデバイス。マテリアル、プロセスなどの最新技術を融合した高機能センサーが相次いで登場。その中で、プロセス技術としてMEMS(微細加工技術=Micro Electro Mechanical Systems)を応用したセンサーの新製品開発が活発化している。

 MEMS技術は、デバイスの小型化、高精度化、高信頼性、長寿命化、高強度化、低価格化、低消費電力化等を実現。MEMS技術を取り込むことにより、自動車分野、情報・通信機器分野、エネルギー、ライフケア、バイオなど幅広い産業機器、民生機器のセンシングデバイスを実現することができる。

 MEMS技術はシリコン上に機能回路を形成するのが一般的。基板はシリコンのほか、ガラス、水晶、樹脂、メタルなど様々な材質を用いることができる。その中で、現状では半導体デバイスで培ったシリコンをベースとしたMEMSの開発技術が進展している。

 すでにMEMSセンサーは、ジャイロセンサー、加速度センサー、圧力センサー、気圧センサー、フォースセンサーなど、様々なセンサーが開発されている。ジャイロセンサーや加速度センサーはモバイル機器で採用が定着化。

 フォースセンサーは、タッチパネルではタッチセンサー代替としてモバイル機器などで脚光を浴びており、画面の透過率を損なわずに組み付けでき、荷重の強弱による表示の多機能化や誤動作を防止するアプリケーションが可能。

 圧力センサーとしては、モジュールとしてアナログ出力、デジタル出力タイプを取り揃えており、取り付け仕様も基板取り付けタイプ、フランジネジ取り付けタイプを用意し、各種の圧力センシングニーズに応える。

 自動車向けでMEMSセンサーを強力に推進するメーカーも出現。村田製作所は、自動車用品質基準AEC Q100 Grade 1 (温度範囲−40℃〜125℃)に適合した加速度センサーを販売。車両のセーフティシステムや車体制御用電子システムに使用されることを前提に設計・製造されており、高信頼・高性能な自動車用デジタル出力加速度センサー。横滑り防止装置 (ESC)、電動パーキングブレーキ、アンチロック・ブレーキ、ヒルスタートアシスト、電子制御サスペンション、アンチロール制御、ロールオーバー検出用センサー、アンチバイブレーションなどに適する。

 また、ジャイロコンボセンサーは、ジャイロセンサーと加速度センサーの一体型センサー。高バイアス安定性、高耐振動性、低ノイズ特性を備えている。横滑り防止装置、アンチロック・ブレーキ、アンチロール制御、ロールオーバー検出用センサー、ナビゲーションシステム、慣性計測ユニット、プラットフォーム制御、運動解析制御、ロボテックコントロールシステムなどに利用できる。

非接触の高感度薄膜サーミスタ
TDKは、非接触で温度変化を高速、高感度で検出できる薄膜サーミスタを開発した。冷蔵庫、電子レンジなどの白モノ家電をはじめ、電子回路、モジュールなどの温度モニター、温度変化による異常検知などに用いられる。

この製品は、シリコン上に電極を構成し、サーミスタ膜をスパッタリングで形成する薄膜MEMSプロセス技術を活用した。これによって、素子サイズを1×0.5ミリメートル程度に小型化できる。また、感熱部のサーミスタ薄膜は、大きな抵抗変化量の活用や、メンブレン構造の採用などで、検知部の熱容量を低減して応答性を向上している。

開発したのは、表面実装に対応した光学フィルター付きの汎用セラミックパッケージ(3ミリメートル角×1.5ミリメートル)を用い、1.5×1.1ミリメートルサイズの検知素子と参照素子を1チップに搭載。これによって、ターゲット温度(赤外線による熱量)と環境温度の同時検出が可能になった。
非接触で検知できるため、熱時定数が10m秒と高速で、しかも同サイズのサーモパイル出力比270%という高感度が得られる。

北陸電気工業は、エフアイエスと共同で超小型、低消費電力のMEMSガスセンサーを開発した。アルコールチェッカ、口臭チェッカ、エアモニターといった様々なモジュールへの応用が可能。新製品は、北陸電気工業のMEMS技術を用いたメンブレン構造の高耐久性超小型マイクロヒータとエフアイエスの半導体ガスセンサーの材料技術を融合した。

マイクロヒータは、メンブレン構造による低熱容量で素早い昇温立ち上がり能力を有する。また、高温下での抵抗値安定性に優れ、しかも高温時の層間熱歪の低減設計、層間密着性を向上した高耐久性ヒータ。このマイクロヒータ上に用途に応じて半導体ガスセンサー膜を形成したもの。

ヒータの基本消費電力が20ミリWと従来の10分の1と低く、熱時定数も同10分の1と小さい。そのため、間欠駆動、パルス駆動に適しており、センサー駆動条件を工夫することによって、従来比5000分の1の低消費電力化を可能にし、電池駆動に対応する。

パッケージサイズは5.5×3×1.5ミリメートルだが、センサーチップサイズが1.5ミリメートル角×0.26ミリメートルのため、2.5ミリメートル角×0.9ミリメートル程度まで小型化が可能。