スイッチング電源技術が高度化している。小型、薄型、軽量および高効率化の追求を基本にエネルギー問題がクローズアップされる中、省エネ化技術が進化。分野別では、太陽光および風力発電、EV/HEV、LEDなど、環境、エネルギー分野向け電源の新製品開発が活発化。一方では成長著しいスマートフォンやタブレット端末といったモバイル機器向けの超小型、薄型DC―DCコンバータの技術進展が目覚ましい。こうした電源技術をサポートするパワー用部品は、マテリアル、プロセス、評価技術をさらに高度化しながら、電源の新製品開発をサポートする。
東日本大震災、原発事故以来、エネルギー問題がクローズアップされている。スイッチング電源においてはスイッチングロスを低減し、高効率化を推進する技術開発が従来から進められてきた。現在では、さらに技術が進展。全負荷時での効率改善、軽負荷時の高効率やコントロールOFF時の待機電力の削減など、高効率で省エネルギーな電源が台頭してきた。
太陽光発電では太陽電池から発電された直流の電力を交流に変換するためのパワーコンディショナが用いられる。このパワーコンディショナは昇圧のためのDC―DCコンバータ、商用電源への供給のためのDC―ACインバータから構成。高周波スイッチング技術による小型、高効率化に向けての開発が活発化している。
パワーコンディショナは絶縁型と非絶縁型があり、これまではアナログ制御の非絶縁型が多かったが、最近ではDC―DCコンバータの制御にデジタルを用いた技術が採用されるようになり、小型、軽量、高効率で、経済性、信頼性の高いパワーコンディショナが出現している。
自動車分野は、HEVに加え、EVが実用化され、本格的なエコカー時代が到来。モーターを駆動し、電気系統に電力を供給するためのインバータ、DC―DCコンバータは、振動、衝撃、温度、湿度などの耐環境性に優れ、小型、軽量、高効率化などが求められる。
いずれにしても、ハイパワーで高電圧、大電流を取り扱うため、パワー用部品に対する信頼性、諸特性の向上が強く求められる。キーデバイスの1つであるスイッチング素子は、MOSFET、IGBTなど、パワーによって使い分けされ、いずれも変換効率を高めるために、オン抵抗を抑制する技術開発が活発化。さらに高耐圧化への対応として、SiCの採用が具体的に検討され始めた。
リアクタは、ケイ素鋼板、フェライト、アモルファス、メタル系といった様々なコア材料が使用されている。スイッチング周波数やパワー特性などによって最適なコア材が用いられ、しかもコア形状も高性能化に向けて最適化。巻線の加工技術も一般的な丸型の銅線を巻線する工法にとどまらず、最近では平角の銅線を縦巻きするエッジワイズ巻きの適用が目立つ。
パワー用コンデンサはアルミ電解およびフィルムコンデンサが採用される。いすれも高温度対応での信頼性確保が強く求められる。特にアルミ電解コンデンサは、一次平滑用として500V以上の高電圧タイプの開発が活発化してきた。
LED関連、照明や表示器、看板に利用拡大
LED関連では一般照明に加え、表示器、看板などとしての利用が広がってきた。LED表示器では、低電圧で大電流が必要。そのために高効率のスイッチング電源が求められている。また、LEDの長寿命化に対応する長期信頼性の確保が必要不可欠である。LED採用の利点に、軽量化による設備工事の負担軽減がある。また、省スペース化が可能になる。
一方、スマートフォンやタブレット端末など、モバイル機器の分野は、小型、軽量でありながら、高機能化技術が急速に進展している。モバイル機器の場合は、様々な半導体デバイスを駆動するための超小型、低背のDC―DCコンバータモジュールが搭載される。高効率で、低電圧駆動するための回路技術、部品選定が重要。高密度実装技術を使った電源モジュールの開発が活発化している。最近では部品内蔵基板技術を用いることで、実装面積の省スペースに寄与する技術開発が行われている。
電源モジュールで使用される受動部品は、小型、低背化に向けた新製品開発が活発化。積層セラミックやタンタルコンデンサ、抵抗器、インダクタなどは、超小型でハイパワー化への対応技術が進んでいる。その中で、パワーインダクタは巻線タイプでの大電流対応、低背化技術が進展。コア材および形状、銅線の選定、巻線方法などの技術が多様化。特にメタル系コア、平角線によるエッジワイズ巻きを採用した新製品開発が活発化している。また、高周波スイッチング技術の適用から、積層型パワーインダクタにおけるハイパワータイプの採用も進んでおり、高さ1ミリメートル内外の超低背タイプが台頭してきた。